日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
たった一つの“傷”が、世界のすべてに見えるとき
仕事で、たった一つ、大きなミスをしてしまった。 すると、他のたくさんの仕事が順調に進んでいても、自分のキャリア全体が、もう終わってしまったかのように感じられる。
恋人に、振られてしまった。 すると、支えてくれる友人や、やりがいのある仕事の存在さえも色あせて見え、自分の人生そのものが、失敗作のように思えてしまう。
私たちは、悩みに直面した時、たった一つのネガティブな出来事や、自分の一つの側面に、過剰に焦点を当ててしまいがちです。 そして、それが自分の“すべて”であるかのように、錯覚してしまうのです。 それはまるで、美しい絵画に、一点のシミがついた時、もはやそのシミしか見えなくなり、絵画全体の美しさを、全く楽しめなくなってしまうような、苦しい視野狭窄の状態です。
アドラー心理学の“鳥の目” – 「全体論」という考え方
この、苦しい視野狭窄から、あなたを救い出してくれるのが、アドラー心理学の重要な視点である「全体論(Holism)」です。
アドラー心理学では、人間を、バラバラな部品の寄せ集めとは考えません。思考、感情、身体、意識、無意識…それらすべてが、分割できない、一つの目的を持った「全体」として、有機的に機能している、と考えます。
そして、この考え方を、私たちの人生そのものにも、応用してみましょう。 あなたの「悩み」や「失敗」という一部分を取り出して、それが「あなたのすべて」であるかのように、判断することはできません。 それは、あなたの人生という、もっと広大で、豊かな「全体」の中の、ほんの一つの要素に過ぎないのです。
あなたの人生は、もっと“多面的”である
そのことを、具体的に体感できる、簡単な思考のトレーニングがあります。
1.「人生の円グラフ」を描いてみる 一枚の紙に、大きな円を描いてみてください。そして、その円を、あなたの人生を構成する、様々な要素で分割してみましょう。「仕事」「家族」「友人」「パートナー」「趣味」「健康」「学び」…。 そして、今、あなたが悩んでいることが、この円グラフ全体の、どれくらいの面積を占めているか、客観的に色を塗ってみてください。
どうでしょうか。多くの場合、その悩みが占める面積は、あなたが心の中で感じているよりも、ずっとずっと、小さいことに気づかされるはずです。私たちは、悩んでいる時、その小さな一部分を、円全体であるかのように、錯覚してしまっているのです。
2.「うまくいっている部分」に、意識的に光を当てる 「仕事」で悩んでいるなら、「友人関係」や「趣味」の領域で、うまくいっていること、楽しめていることは何かを、具体的に思い出してみましょう。 人生のある一部分が、土砂降りの雨でも、他の部分は、穏やかに晴れているかもしれません。その「晴れている部分」の存在を、意図的に思い出し、そこに感謝することで、私たちは、悩みという名の雨雲に、完全に覆い尽くされることから、自分自身を守ることができるのです。
悩みもまた、あなたという“物語”の、愛すべき一場面
そして、最後に。 あなたの悩みや、失敗、欠点でさえも、あなたという人間を形作る、かけがえのない「全体」の一部なのです。 完璧で、傷一つない、順風満帆なだけの人生など、果たして面白いでしょうか。むしろ、そうした悩みや葛藤があるからこそ、人の物語は深みを増し、他者の痛みに共感できる、豊かな人間性が育まれるのではないでしょうか。
悩みとは、撲滅すべき「悪」ではありません。 それは、あなたが、より大きな「全体」へと成長していくための、大切な“きっかけ”であり、あなたという、世界に一つだけの物語を、より面白く、味わい深いものにするための、愛すべき一場面なのです。
どうしても、一つの悩みに囚われてしまい、視野が狭くなってしまう。頭ではわかっていても、失敗した自分を、全否定してしまう癖が抜けない。その苦しいお気持ち、よくわかります。
カウンセリングは、あなたが囚われている「部分」から、一度、距離を置き、あなたの人生という「全体」を、専門家と共に、客観的に、そして肯定的に眺め直す場所です。悩みとの健全な距離感を取り戻し、あなたの人生の、他の豊かな側面に光を当てるお手伝いをさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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