日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
見えない壁の前での“足踏み”
新しいプロジェクトに手を挙げてみたい。でも、うまくいかなかったら周りに迷惑をかけるし、恥ずかしい…。 今の仕事を変えたい気持ちはある。でも、転職先で通用しなかったらどうしよう…。 気になるあの人を食事に誘いたい。でも、もし断られたら、きっと立ち直れない…。
頭の中では、いろいろな計画を立て、シミュレーションも完璧。それなのに、いざ行動に移そうとすると、「やっぱりやめておこう」と、見えない壁の前で足踏みしてしまう。
この「どうしよう…」という不安の正体。それは、私たちの心に深く根付いた、「失敗=自分の価値がないことの証明」という、恐ろしい思い込みに他なりません。
あなたが「失敗を避ける」本当の“目的”
アドラー心理学の「目的論」の視点から見ると、この足踏み状態は、単に「失敗が怖いから」という原因だけで起きているわけではありません。 むしろ、「“行動しない”という目的」を達成するために、失敗への恐怖という感情を、あなたが(無意識に)作り出し、利用している、と捉え直すことができるのです。
では、「失敗を避ける」ことによって、私たちはどんな“メリット”を得ているのでしょうか。
一つは、「自分は有能である」という可能性の中に、安全に留まることができる、というメリットです。 行動さえしなければ、失敗することはありません。「本気を出せばできるはずだ」という万能感の中にいられ、挑戦して「やっぱり自分はダメだった」という現実を突きつけられることから、自分を守ることができるのです。
もう一つは、他者からのネガティブな評価を避けられる、というメリットです。 失敗すれば、「能力がない」「考えが甘い」と笑われたり、がっかりされたりするかもしれない。その批判や嘲笑に傷つきたくない、という自己防衛本能が、あなたを行動しない方へと強く引き留めているのです。
「失敗」の“意味づけ”を変えてみる勇気
失敗への恐怖を乗り越える鍵は、失敗そのものをなくすことではありません。そんなことは不可能です。 鍵となるのは、「失敗」という出来事に対する、あなた自身の「意味づけ」を変えることです。
例えば、こんな風に意味づけを変えてみてはどうでしょうか。
- 失敗は、「うまくいかない方法が、一つわかった」という貴重な「データ収集」である。
- 失敗は、「自分の課題や、もっと伸ばすべき点が見つかった」という、次への成長の「ヒント」である。
- そして何より、失敗は、「それでも挑戦した」という、自分自身の「勇気の証」である。
「失敗は成功の母」という言葉がありますが、それはただ待っていれば成功がやってくるという意味ではありません。失敗というデータやヒントを、次の行動にどう活かすか。その主体的な選択ができて初めて、失敗は成功の母となりうるのです。
「とりあえずやってみる」という、魔法の言葉
では、具体的にどうすれば、その一歩を踏み出せるのでしょうか。
まずは、成功の基準を、自分自身で極限まで下げてみることです。 転職を考えているなら、「希望の会社から内定をもらう」をゴールにするから、一歩が重くなるのです。今日のゴールは、「求人サイトを、一つだけ見てみる」。それで十分、いや、100点満点の成功です。
次に、「とりあえず」「試しに」「練習で」を口癖にしてみましょう。 「本番で、完璧に成功させなければ」と思うから、プレッシャーで体が固まってしまいます。「とりあえず、上司に話だけしてみよう」「試しに、この部分だけ手をつけてみよう」と、行動のハードルを言葉の力で下げてあげるのです。
大切なのは、結果がどうなるかではありません。 行動を起こしたこと、挑戦するために一歩を踏み出したこと、そのプロセスそのものに価値があるのだと、あなた自身が認めてあげること。 たとえうまくいかなくても、「よくやった、自分!」と、その勇気を讃えてあげること。それが、あなた自身にできる、最高の「勇気づけ」なのです。
頭ではわかっていても、過去の失敗体験がトラウマのようになって、どうしても足がすくんでしまう。そんなこともあるでしょう。 もし、あなたが「失敗したらどうしよう」という見えない壁の前で、一人で立ち尽くしているのであれば、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングは、あなたがなぜそれほどまでに失敗を恐れるのか、そのライフスタイルに隠された「目的」を、安全な空間で一緒に探求する場所です。そして、失敗の意味づけを変え、あなたらしい小さな一歩を踏み出すための具体的な練習を、伴走者としてサポートさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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