日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです！ 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
少しだけ高い場所から見る、戸惑いの景色
昨日まで、冗談を言い合っていた同僚が、急によそよそしくなり、「〇〇さん」と、丁寧だけれど、距離を感じる呼び方をしてくる。 飲み会に誘われる回数が減り、自分だけが仲間外れにされたような、静かな寂しさを感じる。 プレイヤーとしては、誰よりも優秀だったはずなのに、いざ「リーダー」という立場になると、一体、何をすればいいのか、全くわからなくなる。
昇進という、喜ばしいはずの出来事。 しかし、それは同時に、あなたをこれまでの仲間から引き離し、孤独な高みへと押し上げてしまったかのように感じられる。 あなたも今、そんな、戸惑いの景色の中に、一人で立ち尽くしてはいませんか。
あなたはもう、「スタープレイヤー」ではないのです
なぜ、このような戸惑いが生まれるのでしょうか。 それは、昇進によって、あなたに求められる「役割」と「貢献の形」が、根本的に変わったからです。
- これまでのあなた（プレイヤー）の貢献 自分のスキルや能力を最大限に発揮し、個人的な成果を出すこと。自らがゴールを決める、チームのスタープレイヤーであることが、最大の貢献でした。
- これからのあなた（リーダー）の貢献 あなたの役割は、もはや自分がゴールを決めることではありません。チームという共同体全体が、たくさんのゴールを決められるように、環境を整え、仲間を援助すること。それが、あなたの新しい貢献の形なのです。
あなたは、スタープレイヤーから、チームを勝利に導く「監督」や「コーチ」へと、その役割を変えることを求められています。この、華やかで、しかし孤独な役割の変化を受け入れ、楽しむこと。それが、リーダーとしての第一歩です。
「管理」という名の“縦の関係”が、孤独を深める
新しいリーダーが、最も陥りがちな罠。 それは、結果を出さなければという不安や焦りから、部下を**「管理・支配」**しようとすることです。 「自分のやり方が一番正しい」と、細かく指示を出し（マイクロマネジメント）、「上司なのだから、言うことを聞くべきだ」と、権力を振りかざしてしまう。
このような関わり方は、部下を「指示待ちの、未熟な存在」として扱う「縦の関係」です。 それは、部下の勇気をくじき、自ら考える力や、挑戦する意欲を奪います。そして、部下はあなたに心を閉ざし、あなたはますます孤独になっていく…という、最悪の悪循環を生み出してしまうのです。
“勇気づけ”で、孤独な「点」を、最強の「チーム」に変える
では、アドラー心理学が示す、理想のリーダーシップとは何でしょうか。 それは、たった一言、「勇気づけ」に集約されます。
リーダーの本当の仕事とは、部下を管理することではありません。 部下一人ひとりが、「自分には価値がある」「自分はこのチームに貢献できている」と感じられるように、援助することなのです。
- 仕事１：課題を“分離”し、仕事を“信頼”して任せる 「やり方」は、部下に任せましょう。失敗する可能性があったとしても、部下の力を信じるのです。そして、「責任は、私が取る。だから、思い切ってやってみなさい」と、部下が安心して挑戦できる「安全基地」を作る。これが、リーダーの覚悟です。
- 仕事２：評価（褒める・叱る）ではなく、「感謝」を伝える 「すごいな」という上からの評価ではなく、「ありがとう、君のおかげで、本当に助かったよ」と、仲間としての感謝（Iメッセージ）を伝えます。その貢献を、具体的に言葉にしてフィードバックすることが、部下の「貢献感」を育てます。
- 仕事３：チームの「羅針盤」となり、共通の目標を示す 「私たちは、誰のために、何のために、この仕事をしているのか？」という、共同体の目標（貢献の方向性）を、明確に、そして情熱をもって示し続ける。メンバーが、自分の仕事が、より大きな貢献に繋がっていると実感できた時、チームは本当の意味で一つになります。
リーダーとは、メンバーの上に君臨する「王様」ではありません。 メンバーの横に立ち、共に汗を流し、その歩みを心から応援する、頼れる「仲間の一人（伴走者）」なのです。 その時、あなたが感じていた孤独感は、仲間との強いつながり（共同体感覚）と、チームを育てるという、新しい貢献の喜びによって、温かく満たされているはずです。
リーダーとしての振る舞い方がわからず、孤独とプレッシャーに押しつぶされそう。部下との間に、どうしても壁を感じてしまう。そのお気持ち、よくわかります。
カウンセリングでは、あなたが抱えるリーダーとしての不安の正体を探り、あなたのライフスタイルを見つめ直します。そして、「管理」ではなく「勇気づけ」をベースにした、あなたらしいリーダーシップの形を、具体的なコミュニケーションの練習を通して、一緒に見つけていきましょう。
初回カウンセリング（オンライン）はこちらからお申し込みいただけます。
お会いできるのを楽しみにしています。
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