日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
「また、カッとなってしまった…」という自己嫌悪
パートナーの些細な一言に、売り言葉に買い言葉で、気づけば激しい口論になっていた。 子どもの言うことを聞かない態度に、思わず声を荒らげてしまい、泣かせてしまった。 部下のミスに対して、必要以上に厳しい言葉で詰問し、場の空気を凍りつかせてしまった。
そして、怒りの嵐が過ぎ去った後にやってくるのは、気まずさと深い後悔。「どうして自分は、あんなに感情的になってしまったんだろう…」という、自分自身への嫌悪感。 多くの人が、「怒りっぽい性格を直したい」「もっと穏やかな人間になりたい」と願いながらも、なかなかそのループから抜け出せずに苦しんでいます。
怒りは“道具”であり、“二次感情”である
アドラー心理学では、この「怒り」という感情を、少しユニークな視点から捉えます。
まず一つは、怒りは、相手を操作するための“道具”であるという「目的論」の視点です。 私たちは、相手を自分の思い通りに動かしたい時、手っ取り早く、そして非常にパワフルな「怒り」という感情を、無意識のうちに“道具”として使います。大声を出せば、相手は言うことを聞くかもしれない。不機嫌な顔をすれば、相手は慌てて機嫌を取ろうとするかもしれない。怒りは、相手を屈服させ、支配するための便利な手段なのです。
そして、もう一つの重要な視点が、怒りは、本当の気持ちを隠すための“二次感情”であるという考え方です。 実は、怒りという感情は、単独で発生することはほとんどありません。その燃え盛る炎のような怒りの“仮面”の下には、もっと繊細で、傷つきやすい「一次感情」が隠れているのです。
その一次感情とは、例えば、「悲しい」「寂しい」「不安だ」「がっかりした」「わかってほしい」「悔しい」「傷ついた」といった、私たちの心の柔らかな部分です。
私たちは、こうした脆い一次感情を素直に表現すると、「弱い人間だ」と思われたり、つけ込まれたりするのではないかと恐れます。だから、それらを守るために、とっさに「怒り」という攻撃的な二次感情の鎧を身につけて、自分を武装するのです。
あなたの「怒り」が、本当に伝えたかったこと
具体的な場面で、怒りの仮面の下を探ってみましょう。
例えば、約束の時間に大幅に遅れてきた友人への怒り。 その「どうして時間を守れないんだ!」という怒り(二次感情)の下には、「会えるのを楽しみにしていたのに、がっかりした」「自分との約束は、軽く扱われたように感じて、悲しかった」という一次感情が隠れていませんか。
例えば、自分の話を上の空で聞いているパートナーへの怒り。 その「ちゃんと聞いてるのか!」という怒り(二次感情)の下には、「私の話に興味がないのかな、と寂しくなった」「一人で空回りしているみたいで、虚しくなった」という一次感情が隠れていませんか。
あなたの怒りは、実は「私は今、こんな風に感じて、傷ついているんだ!」という、心の奥底からの悲鳴なのかもしれないのです。
仮面を外し、本当の気持ちを「Iメッセージ」で伝える勇気
この事実に気づくことができれば、私たちのコミュニケーションは大きく変わります。 怒りに任せて、「あなた(You)は、いつも〇〇だ!」と相手を主語にして非難する(Youメッセージ)のをやめ、自分の一次感情に焦点を当てて、「私(I)は、〜と感じた」と、自分を主語にして伝えるのです。これを「I(アイ)メッセージ」と言います。
「あなたが遅刻したから、私は怒っている!(Youメッセージ)」 ではなく、 「あなたが時間に来てくれなくて、私は、ないがしろにされたようで悲しかった(Iメッセージ)」
「あなたが話を聞いていないから、私は怒っている!(Youメッセージ)」 ではなく、 「私は、真剣に聞いてほしくて、寂しい気持ちになったんだ(Iメッセージ)」
自分の弱さとも言える一次感情を、相手に正直に開示するのは、とても勇気がいることです。 しかし、相手を非難する「Youメッセージ」が反発や対立を生むのに対し、自分の気持ちを誠実に伝える「Iメッセージ」は、相手の心に届き、共感や協力を促します。
怒りの仮面を外して、あなたの本当の気持ちを伝えてみませんか。 それは、支配ではない、本物の信頼関係を築くための、最も勇気ある一歩となるはずです。
長年の怒りのパターンを、一人で変えていくのは難しいことかもしれません。カッとなった瞬間に、自分の一次感情に気づく余裕などない、と感じるのが普通です。 もし、あなたが感情のコントロールに悩み、怒りの連鎖から抜け出したいと願うなら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、あなたの怒りがどんな「目的」で使われているのか、その下にどんな一次感情が隠れているのかを、安全な空間で一緒に探求していきます。そして、「Iメッセージ」を使った健全なコミュニケーションを練習し、厄介者だと思っていた感情を、あなたの人生の味方にしていくお手伝いをさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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