日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです！ 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
「期待しない」と決めた日、心に吹いた隙間風
「もう、人に期待するのはやめよう」 裏切られたり、がっかりしたり、他人の言動に一喜一憂したりするのに、もう疲れた。 そう決意して、「課題の分離」を実践し始めた。相手がどう思うかは、相手の課題。私は、私の課題に集中するだけ。
確かに、心は楽になった。イライラすることも、落ち込むことも、以前よりずっと減った。 でも、なぜだろう。 人間関係のストレスから解放されたはずなのに、心の中には、まるで隙間風が吹いているような、静かな寂しさがある。 人との関わりが、どこか味気ないものに感じられる。世界全体が、まるで色褪せて、モノクロに見えるような、そんな感覚。 あなたにも、そんな経験はありませんか。
あなたが手放したのは、「期待」だけではなかったのかもしれない
その虚しさの正体は、一体何なのでしょうか。 それは、あなたが「期待」という重たい荷物をおろした時、その荷物と一緒に、何か大切なものまで、手放してしまったからかもしれません。
その大切なものとは、他者への「関心」であり、人と人とを繋ぐ「信頼」という名の、温かいエネルギーです。
私たちは、「期待しない」ことを、「他者に無関心になること」「他者を突き放すこと」だと、勘違いしてしまうことがあります。 「どうせ相手は変わらない」「どうせわかってくれない」という諦めを、「課題の分離」という便利な言葉で正当化し、他者との間に、冷たくて分厚い壁を築いてしまうのです。 その壁は、確かにあなたを外からの攻撃から守ってくれます。しかし同時に、外からの温かい光や、人との繋がりがもたらす豊かな色彩をも、遮断してしまうのです。
「期待」と「信頼」は、似て非なるもの
ここで、アドラー心理学が示す、非常に重要な区別についてお話しします。 それは、「期待」と「信頼」は、全くの別物である、ということです。
- 期待とは、相手に対して「こうしてくれるはずだ」「こうあるべきだ」という、条件や見返りを求める心です。それは、相手を自分の思い通りにコントロールしようとする、実は自己中心的な「縦の関係」の発想です。だから、期待が裏切られると、怒りや失望が生まれます。
- 信頼とは、相手に対して、何の条件もつけず、見返りも求めず、ただ「その人」そのものを信じる心です。「この人は、私が信じるに値する仲間だ」と、無条件に信じること。たとえ、その信頼が裏切られる可能性があったとしても、それでもなお、自分から信じるという勇気を持つこと。これが、対等な「横の関係」の出発点です。
あなたが「期待」をやめたことで感じている虚しさは、「信頼」という、次の一歩を踏み出せていないことから来ているのかもしれません。
色褪せた世界に、再び“彩り”を取り戻す方法
では、どうすれば、このモノクロの世界に、再び温かい色彩を取り戻すことができるのでしょうか。
ステップ１：「期待」ではなく、「信頼」から始めてみる まず、身近な誰か一人に対して、「この人は、私の仲間だ」と、心の中で決めてみましょう。相手が何かをしてくれるかどうかは、関係ありません。ただ、あなたの方から、一方的に、無条件に、その人の存在を信じてみるのです。
ステップ２：見返りを求めない「貢献」をしてみる その「信頼」をベースに、相手のために、何か小さな「貢献」をしてみましょう。 大切なのは、「ありがとう」と言われるかどうかを、一切期待しないことです。「私は、ただ、この仲間が喜んでくれたら嬉しいから、これをやるのだ」と、自分の意思で、貢献そのものを楽しむのです。
ステップ３：再び、他者に“関心”を持つ勇気 「この人は、今、何に興味があるんだろう？」「どんなことに、喜ぶんだろう？」 他者の評価を気にする「自己への関心」から、相手そのものへの、純粋な「他者への関心」へと、意識のベクトルを切り替えてみましょう。その関心こそが、関係性に温かい血を通わせ、あなたの世界に、豊かな色彩を取り戻してくれるのです。
「期待しない」ことは、人間関係のゴールではありません。 それは、「期待」という不自由な鎖から自分を解放し、「信頼」と「貢献」に基づいた、もっと豊かで、自由な関係性を、自らの手で築いていくための、本当のスタートラインなのです。 その一歩を踏み出した時、あなたの目に映る世界は、以前よりもずっと、深く、鮮やかな色合いを放ち始めるはずです。
「期待」と「信頼」の違いは、頭ではわかっていても、実践するのは難しいものです。裏切られることを恐れ、なかなか人を信頼する勇気が持てない、という方もいるでしょう。 もし、あなたがその虚しさから抜け出し、本当の意味で人との繋がりを取り戻したいと願うなら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、あなたがなぜ「期待」を手放せないのか、あるいは「信頼」することが怖いのか、そのライフスタイルを安全な空間で一緒に探求します。そして、見返りを求めない「貢献」の喜びを見出し、あなたの人生に豊かな彩りを取り戻すためのサポートをさせていただきます。
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お会いできるのを楽しみにしています。
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