「課題の分離」は冷たい?いいえ、それは最大の「尊敬」です。

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

「それは、あなたの課題でしょ」という、冷たい響き

悩んでいる友人に対して、心の中で「それは、あなたの課題だ」と線を引くと、なんだか自分が、とても冷たい人間になったように感じてしまう。 宿題をしない子どもに、手を出さずに見守っていると、「自分は無関心な親なのではないか」と、罪悪感に苛まれる。 「課題の分離」を実践しようとしたら、人間関係が、かえってギスギスしてしまった…。

アドラー心理学の最重要概念である「課題の分離」。 しかし、その言葉が、時に「自己責任論」「冷淡な個人主義」のように誤解され、相手を突き放し、関係を断絶するための、便利な言い訳として使われてしまうことがあります。 「本当に、アドラーの伝えたかったことは、そんな、寂しいものだったのでしょうか?」

なぜ、あなたは相手の“荷物”を背負ってしまうのか?

そもそも、なぜ私たちは、「課題の分離」が、こんなにも難しく、冷たいものだと感じてしまうのでしょうか。 それは、私たちが無意識のうちに、相手の課題を、自分の課題であるかのように、代わりに背負い込んでしまう癖(ライフスタイル)があるからです。

良かれと思って、相手の仕事に口を出したり、子どもの問題を先回りして解決してあげたりする。 その行動は、一見すると、優しさや親切心に見えるかもしれません。 しかし、その根底には、「この人は、自分一人では何もできない、劣った、無力な存在だ」という、相手への、無意識の見下しが隠れているのです。 それは、相手を対等な仲間として見ていない、不健全な「縦の関係」の、典型的な関わり方なのです。

「課題の分離」の根底にある、絶対的な“信頼”

ここで、アドラー心理学が本当に伝えたかった、「課題の分離」の、本当の意味をお伝えします。 「課題の分離」とは、決して、相手を突き放す、冷たい行為ではありません。 それは、「あなたには、あなた自身の課題を、あなた自身の力で乗り越える能力があると、私は心から信じています」という、相手への、最も深く、そして力強い“信頼”と“尊敬”の表明なのです。

「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲むかどうかは、馬自身の課題である」という、有名な言葉があります。 あなたが、相手の課題を肩代わりすることは、喉の渇いていない馬に、無理やり水を飲ませようとするようなもの。それは、馬の力を信じていない、侮辱的な行為に他なりません。 相手の課題に介入しないこと。それは、相手が「自立する権利」を、最大限に尊重する、最高の優しさなのです。

分離した“後”に始まる、本当の「協力」

「では、困っている人を見ても、何もしなければいいのか?」 いいえ、そうではありません。「課題の分離」は、関係の終わりではありません。 それどころか、本当の意味での「協力」関係を築くための、すべての始まりなのです。

ステップ1:境界線を引く。そして、見守る。 まず、「これは、あなたの課題だね」と、心の中で明確に線を引きます。そして、相手が自分の力で課題に取り組むのを、口出しせずに、辛抱強く見守ります。

ステップ2:援助の準備があることを、明確に伝える。 分離は、無関心とは違います。「もし、私の助けが必要になったら、いつでも声をかけてほしい。私にできることがあれば、喜んで協力するよ」と、仲間としての連帯の意思を、はっきりと伝えておくのです。

ステップ3:「肩代わり」ではなく、「勇気づけ」で援助する。 そして、相手から助けを求められたとしても、答えを与えたり、代わりに問題を解決したりはしません。「あなたなら、どうしたい?」「一緒に考えてみようか」と、あくまで本人が答えを見つけ出すプロセスに、対等なパートナーとして寄り添う。これこそが、最高の勇気づけです。

「課題の分離」とは、あなたと相手の間に、冷たい壁を築くことではありません。 それは、お互いが自立した個人として、尊敬し合い、そして、本当に必要な時に、心から手を取り合える、「横の関係」を築くための、不可欠な土台なのです。 その土台の上に立った時、あなたは初めて、相手との間に、本当の意味での、温かい信頼関係を築くことができるでしょう。


どうしても、困っている人を見ると、放っておけずに、過剰に介入してしまう。あるいは、「課題の分離」をしようとすると、強い罪悪感に襲われてしまう。そのお気持ち、よくわかります。

カウンセリングでは、あなたがなぜ他者の課題を背負い込んでしまうのか、その背景にあるあなたのライフスタイルを探求します。そして、罪悪感なく「課題の分離」を実践し、相手への本当の「信頼」と「尊敬」に基づいた、健全な協力関係を築いていくお手伝いをさせていただきます。

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