日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
「なんで、この熱意が伝わらないんだ!」という、もどかしさ
良かれと思って、自分の成功体験を熱く語れば語るほど、後輩の目は、どんどん虚ろになっていく。 仕事のやり方を、手取り足取り、これ以上ないくらい丁寧に教えたはずなのに、一向に自分で考えて動こうとしない。 「期待しているぞ!」と力強く励ませば励ますほど、後輩はプレッシャーで固まってしまい、かえってミスが増える。
そして、あなたは心の中でこう叫ぶのです。 「俺は、お前のためを思って言っているのに、なんで伝わらないんだ!」と。 この、自分の「善意」と「熱意」が、相手に全く響かず、むしろ逆効果になっているようにさえ感じる、もどかしさ。そして、そこから生まれる苛立ちや無力感。あなたも、そんな経験はありませんか。
その“やる気”、誰の“課題”ですか?
なぜ、あなたの熱意は、空回りしてしまうのでしょうか。 その最も大きな理由は、あなたが無意識のうちに、後輩の課題に、土足で踏み込んでしまっているからです。
アドラー心理学では、これを「課題の分離」という、非常に重要な考え方で説明します。
- 後輩の課題:仕事に対して、やる気を出すかどうか。どのように仕事を進めるか。失敗から何を学ぶか。成長するかしないか。
- あなたの課題:後輩が自ら課題に取り組めるように、援助すること。適切な情報を提供し、環境を整え、相談に乗ること。
つまり、後輩のやる気を“出させる”のは、あなたの課題ではないのです。 それは、他人を自分の思い通りにコントロールしようとする、傲慢な発想に他なりません。あなたがコントロールできないものを、必死でコントロールしようとするから、空回りし、イライラしてしまうのです。
あなたが、無意識にかけている「勇気くじき」の呪い
さらに、あなたの「良かれと思って」の行動が、実は後輩の勇気をくじいていないか、一度、振り返ってみる必要があります。
- 過剰な指示(マイクロマネジメント) これは、「あなたには、一人で正しく判断する能力がない」という、不信のメッセージを、相手に送りつけているのと同じです。
- 他人との比較 「同期の〇〇君は、もうこれくらいできているぞ」という言葉は、相手に強烈な劣等感を植え付け、やる気を根こそぎ奪い取ります。
- 結果だけで評価する 「よくやった、すごいな!」という賞賛(褒める)は、一見すると良いことのように思えます。しかし、それは「結果を出せないお前には、価値がない」というメッセージにもなりうる、相手を評価の対象として見る「縦の関係」のコミュニケーションです。
これらの行動はすべて、後輩から「自分で考える機会」「失敗から学ぶ機会」「自信を持つ機会」を奪い、「どうせ、自分なんて…」と思わせてしまう、最悪の「勇気くじき」なのです。
「やる気」を引き出すのではなく、「勇気」を手渡す関わり方
では、どうすればいいのでしょうか。 その答えは、「やる気」という、他人の感情を操作しようとするのをやめ、後輩が自ら立ち上がるための「勇気」を手渡す、という関わり方にあります。
ステップ1:「教える」から「聴く」へ すぐに答えを教えるのをやめ、「この仕事、君はどう進めていこうと思ってる?」「何か、困っていることや、懸念していることはないかな?」と、まず相手の考えや状況を、敬意をもって聴くことから始めましょう。
ステップ2:「評価」から「感謝」へ 「すごいな」という上からの評価ではなく、「〇〇してくれて、本当にありがとう。すごく助かったよ」と、仲間としての感謝(Iメッセージ)を伝えます。その貢献が、チームにとっていかに有益だったかを具体的に伝えることで、後輩の「貢献感」が育ちます。
ステップ3:「心配」から「信頼」へ 「大丈夫か?」と、疑いの目で監視するのをやめます。そして、こう伝えるのです。 「この件、君に任せるよ。君ならできると信じている。何かあったら、責任は私が取るから、思い切ってやってみてほしい」と。 失敗する権利も含めて、相手を信頼する姿勢を見せること。この安心感が、後輩が安心して挑戦するための、安全基地となるのです。
あなたの上司としての役割は、後輩のやる気を無理やり引き出すことではありません。 後輩が、「自分には、この課題を乗り越える力がある」「自分は、このチームの役に立っている」と、自分自身で感じられるように、援助することなのです。
あなたが、後輩を「管理すべき対象」ではなく、「信頼する仲間」として見た時、後輩は、誰に言われるでもなく、自らの意思で、その心に「やる気」の火を灯し始めるでしょう。
頭ではわかっていても、つい後輩の仕事に口を出してしまう。どうすれば、後輩を心から信頼できるのかわからない。そんな、リーダーとしての悩みを、一人で抱えていませんか。
カウンセリングでは、あなたがなぜ後輩をコントロールしようとしてしまうのか、その背景にあるあなたのライフスタイル(完璧主義や不安など)を探求します。そして、「縦の関係」の支配から、「横の関係」の勇気づけへと、あなたのリーダーシップを転換させていくための、具体的な練習をサポートします。
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お会いできるのを楽しみにしています。
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