日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
「ありのままの自分」という、甘い罠
「ありのままの自分を、受け入れましょう」 最近、よく耳にする、とても優しくて、心が救われるような言葉です。
しかし、心のどこかで、こう思ってはいませんか? 「『自己受容』って、結局、『今のままでいい』と、自分を甘やかすことでしょ?」 「欠点だらけの自分を、開き直って肯定するなんて、ただの怠慢じゃないの?」 「そんなことをしたら、何の成長もなくなってしまうんじゃないか…」と。
「ありのままの自分を受け入れる」という言葉が持つ、一見すると心地よい響き。しかし、その意味を勘違いしてしまうと、それは成長を止めてしまう「諦め」や、自分の課題と向き合わない「開き直り」といった、危険な罠になってしまうのです。 アドラー心理学が語る「自己受容」は、そのような停滞を意味するものでは、断じてありません。
変えられないものを、受け入れる“勇気”
アドラー心理学における「自己受容」の、本当の意味。 それは、「変えられないもの」と「変えられるもの」を、冷静に見極めることから始まります。
- 変えられないもの:過去の出来事、生まれ持った気質、他人が自分のことをどう思うか、など。
- 変えられるもの:これからの自分の行動、物事への意味づけ、人との関わり方、など。
「自己受容」とは、この「変えられないもの」に対して、「仕方がない」と、ありのままに受け入れる、静かで、しかし力強い“勇気”のことなのです。 それは、自分ではコントロール不可能なことで、これ以上、心を悩ませ、エネルギーを浪費するのをやめる、という、極めて建設的で、賢明な決断に他なりません。
「60点の自分」から、一歩を踏み出す“覚悟”
そして、ここが最も重要なのですが、「自己受容」は、決して「諦め」ではありません。 それは、「できない自分」「不完全な自分」を、評価(ジャッジ)することなく、変化のための“スタート地点”として、ただ認めることです。
「今の自分は、100点満点中、60点かもしれない。よし、この60点の自分から、始めよう」という、未来志向の“覚悟”なのです。
- 諦めとは、「自分は60点しか取れない人間だ。だから、もう何をやっても無駄だ」と、未来の可能性を、自ら閉ざしてしまうことです。
- 自己受容とは、「今の自分は、確かに60点だ。では、ここから61点、62点にしていくために、どうしたらいいだろう?」と、未来への具体的な一歩を、考え始めることです。
お分かりでしょうか。自己受容とは、停滞ではなく、変化と成長のための、最も重要な“土台”なのです。
自分を許せた時、初めて他者を信頼できる
この「自己受容」は、なぜ、それほどまでに重要なのでしょうか。 それは、自己受容が、他者と、そして世界と、温かい信頼関係で結ばれるための、すべての始まりの扉だからです。
自分の不完全さを受け入れられない人は、他者の不完全さもまた、許すことができません。常に他人を「正しいか、間違っているか」で裁き、「上か、下か」で見る「縦の関係」でしか、人と関われないのです。
しかし、「自分もまた、完璧ではない、不完全な人間だ」と、自分自身を許すことができた時(自己受容)、私たちは初めて、「他者もまた、自分と同じように、不完全な仲間なのだ」と、心から信じることができるようになります(他者信頼)。
そして、不完全な自分のままで、「それでも、この仲間たちの役に立ちたい」と、ありのままの自分で、他者に貢献しようと思えるようになる(他者貢献)のです。
あなたは、完璧な人間になる必要など、全くありません。 ただ、不完全な自分を、勇気をもって受け入れること。 そして、仲間である他者を信頼し、今日できる、ささやかな貢献を、一歩ずつ、踏み出していくこと。 それこそが、アドラーが本当に伝えたかった、豊かで、幸せな人生の歩み方なのです。
どうしても、自分の欠点ばかりが気になって、自分を許すことができない。「自己受容」と、ただの「甘え」や「開き直り」との違いが、よくわからない。そんな風に悩んでしまうこともあるでしょう。
カウンセリングは、あなたがなぜご自身の不完全さを受け入れられないのか、その背景にあるライフスタイルを、安全な空間で一緒に探求する場所です。そして、非生産的な自己否定から抜け出し、ありのままの自分をスタート地点として、未来への一歩を踏み出す「勇気」を取り戻すお手伝いをさせていただきます。
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お会いできるのを楽しみにしています。
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