「いい人」を演じてしまう

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

あなたも「いい人疲れ」していませんか?

本当はもう自分の仕事で手一杯なのに、後輩から「お願いできますか?」と頼まれると、にっこり笑って「いいよ」と引き受けてしまう。

会議の席で、内心では「それは違うんじゃないか…」と思っていても、場の空気を読んで周りに合わせて黙って頷く。

友人の誘いを断ったら、がっかりさせてしまうかもしれない。そう思うと、気が進まなくても「行く行く!」と返事をしてしまう。

そんなふうに、いつも誰かの期待に応えよう、誰かをがっかりさせないようにしようと気を張り詰め、一日の終わりにはどっと疲れている。心当たりはありませんか。

周りからは「優しい人」「頼りになる人」と思われているかもしれません。しかし、あなたの心の中では、「なんだか息苦しい」「本当の自分はどこにいるんだろう」という、小さな叫び声が響いているのではないでしょうか。

なぜ、私たちは「いい人」を演じてしまうのか

その息苦しさの正体、それはアドラー心理学の言葉を借りるなら「承認欲求」に深く関わっています。

「他者から認められること」によってはじめて、自分の価値を感じられる。人に褒められたり、感謝されたり、あるいは少なくとも「嫌われない」ことで、ようやくここにいていいのだと安心できる。そんな心のメカニズムが働いているのです。

これは、あなたが生まれつき持っていたものではありません。幼い頃からの経験の中で、「親の期待に応える良い子でいなければ愛されない」「先生に褒められる自分でなければ価値がない」といった、その人なりの「ライフスタイル(性格)」を、無意識のうちに自分で作り上げてきた結果なのです。

しかし、他者の評価という、自分ではコントロールできないものを自分の価値の土台にしている限り、私たちは常に他者の顔色をうかがい、期待という重荷を背負い続けることになります。

その重荷をおろす魔法の言葉

では、どうすればその重荷をおろすことができるのでしょうか。 ここで、アドラー心理学の最も重要な知恵の一つである「課題の分離」をご紹介します。

これは、「その課題は、最終的に結果を引き受けるのは誰の課題(タスク)なのか?」という、シンプルな線引きのことです。

例えば、同僚から無理な仕事を頼まれたとしましょう。 その仕事を引き受けるか、断るかを決めるのは、あなたの時間や労力に関わることですから、これは「あなたの課題」です。 一方で、あなたが断ったことに対して、同僚がどう思うか(がっかりする、機嫌を損ねる、あなたを「冷たい人だ」と評価するなど)は、同僚が考えることであり、同僚が引き受けるべき感情です。つまり、それは「相手の課題」なのです。

私たちは、この「相手の課題」にまで土足で踏み込み、「相手をがっかりさせないようにしなければ」と背負い込んでしまうから苦しくなるのです。あなたがコントロールできない他者の感情まで、責任を負う必要はありません。

「いい人」をやめても、世界は終わらない

「課題の分離なんてしたら、ただのわがままな人だと思われて、嫌われてしまうのでは…」 そう心配になるかもしれませんね。

しかし、考えてみてください。「課題の分離」とは、相手を無視したり、突き放したりすることではありません。むしろ、「私は私の課題に責任を持ちます。あなたもあなたの課題に責任を持ってください。お互いを一人の人間として尊敬しましょう」という、健全な人間関係の第一歩なのです。

あなたが自分の課題と向き合い、無理な時には勇気を持って「ごめん、それはできません」と伝える。自分の意見を、相手への尊敬を払いながら「私はこう思います」と表明する。 そんなあなたの姿は、多くの人にとって「自分勝手」ではなく、「自分を持っている信頼できる人」と映るはずです。

もちろん、中にはあなたの変化を快く思わず、離れていく人もいるかもしれません。しかし、それは「あなたが『いい人』でいること」を一方的に利用していただけの人かもしれません。あなたが無理をしてまで、その人の機嫌を取り結ぶ必要のある関係でしょうか。

「いい人」の仮面を脱ぎ捨てた時、そこには少しの不安と、そして、これまでにないほどの自由が待っています。そして、本当のあなたを理解し、大切にしてくれる人との、より深く温かい関係が始まるのです。


理屈はわかっても、長年の癖で、いざとなるとなかなか「NO」と言えない。そんな自分に落ち込んでしまうこともあるでしょう。 もし、あなたがその一歩を踏み出すのに、誰かのサポートが必要だと感じたら、一度お話しに来ませんか。

カウンセリングでは、具体的な場面を想定しながら、どうすれば自分も相手も尊重したコミュニケーションがとれるのか、一緒に練習することができます。あなたの「ライフスタイル」を優しく見つめ直し、より軽やかに生きていくための新しい選択肢を、一緒に探していきましょう。


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