「楽観主義」ではなく「楽観性」アドラーが教える未来への信頼

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

「楽観主義」ではなく「楽観性」アドラーが教える未来への信頼。

「もっと楽観的に考えなきゃ!」 「ポジティブにいこう!」

先の見えない未来に不安を感じた時、私たちはそう自分に言い聞かせようとします。でも、そうすればするほど、心の奥底から「でも、本当に大丈夫なの…?」という声が聞こえてきて、かえって疲れてしまう。そんな経験はありませんか。

無理やり明るい未来を信じ込もうとする、そのフワフワした感覚への違和感。実は、その感覚こそ、あなたの心が健全である証拠なのかもしれません。

アドラー心理学が教えるのは、根拠のない「楽観主義」ではありません。どんな時も私たちを支えてくれる、地に足の着いた力強い「楽観性」という考え方なのです。

「楽観主義(オプティミズム)」の落とし穴

まず、私たちがよくイメージする「楽観主義」とは何でしょうか。 それは、「きっとうまくいくさ」「なんとかなるなる!」と、具体的な根拠なく未来を肯定的に捉える態度のことです。

もちろん、この考え方が心を軽くしてくれることもあります。しかし、そこにはいくつかの落とし穴も潜んでいます。

一つは、現実逃避につながりやすいこと。目の前の課題や困難から目をそらし、「なんとかなる」という言葉を、行動しないための言い訳にしてしまう危険性です。

そしてもう一つは、うまくいかなかった時にとても脆いこと。何の根拠もなかったため、一度つまずくと「やっぱりダメだったんだ…」と、以前より深い悲観に落ち込んでしまうことも少なくありません。不安な気持ちに蓋をして「ポジティブでいなければ!」と自分を追い込むのは、とても苦しい作業です。

アドラーが教える「楽観性(オプティミスティック)」とは?

では、アドラー心理学が大切にする「楽観性」とは、一体何が違うのでしょうか。

それは、未来の結果を信じるのではなく、自分自身のプロセスを信頼する態度です。言葉にするなら、こうなります。

「未来がどうなるかは分からない。困難なこともあるだろう。しかし、どんなことが起ころうとも、私にはそれを乗り越えていける力がある

この二つの違い、お分かりいただけるでしょうか。 「きっとうまくいく」ではなく、「たとえうまくいかなくても、私はそこから何かを学び、次の一歩を踏み出せる」という、自分自身への揺るぎない信頼がベースにあるのです。

ですから、これは「根拠のない楽観」ではありません。 「これまでも、なんだかんだ乗り越えてきたじゃないか」という過去のささやかな成功体験や、「私にはいざとなったら助けを求められる仲間がいる」という人との繋がり(共同体感覚)が、その「根拠」となります。それは、嵐の日に「きっと晴れるさ」と空を見上げるのではなく、「この船なら、きっと乗り越えられる」と、自分の船の頑丈さを信じる感覚に近いかもしれません。

「楽観性」を育てるための心の習慣

この地に足の着いた「楽観性」は、日々のちょっとした習慣で育てていくことができます。

  1. 「できたこと」に注目する 一日の終わりに「できなかったこと」を反省するのではなく、「できたこと」「やったこと」を3つだけ思い出してみましょう。「朝、時間通りに起きられた」「苦手な人に挨拶できた」「メールを1通返信した」。どんなに小さなことで構いません。これは「自分は行動できる存在だ」という自己信頼の種を、心にまく作業です。
  2. 課題から逃げない 大きな問題に直面した時、「どうせ無理だ」と諦めるのではなく、「どうすればできるだろう?」「まず、何から始められるだろう?」と、問いの形を変えてみてください。すぐに解決できなくても、課題に向き合おうとするその姿勢自体が、あなたの力を信じるための最高のトレーニングになります。
  3. 「ありがとう」で仲間を増やす 周りの人に、どんな小さなことでも「ありがとう」「助かります」と伝えてみましょう。感謝の言葉は、あなたと他者を「仲間」として繋ぎます。「自分は一人ではない」という感覚は、未来へ向かうための何よりの安心材料になります。

未来は分からない。だからこそ、面白い。

アドラー心理学の師である野田俊作先生は、ある時こう語りました。 「一寸先は闇ですよ。まさにそのとおりで、一寸先が闇だからこそ歩く価値があるのであって、ずっと先が見えていたら、つまらないではないですか」

未来がどうなるかは、誰にも分かりません。だから私たちは不安になります。 でも、その不確かさがあるからこそ、人生は面白いとも言えるのです。

どんな未来が来ようとも、自分を信じ、仲間を信じ、今できる一歩を踏み出す。 その力強い「楽観性」こそが、予測不能な時代を自分らしく航海していくための、本当のお守りになるのです。


もし、あなたが漠然とした不安に押しつぶされそうになっていたり、自分自身の力を信じることが難しくなっていたりするなら、ぜひ一度お話ししに来てください。あなたという船の素晴らしさを、一緒に再発見していきましょう。


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