日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
なぜか、いつも思い出す“あの場面”
あなたの、一番古い記憶は何ですか? そして、ふとした瞬間に、なぜか決まって思い出す、幼い頃の光景はありませんか。
運動会のかけっこで転んで、大勢の前で笑われた記憶。 親にひどく叱られて、一人、部屋の隅で泣いていた記憶。 先生に褒められて、胸がいっぱいになった、あの誇らしい気持ち。
私たちの人生には、それこそ星の数ほどの出来事があったはずです。それなのに、なぜ私たちは、特定の記憶だけを、まるで大切な宝物か、あるいは消えない傷跡のように、何度も何度も、心の中で再生するのでしょうか。 私たちは、記憶を「過去の出来事を、ありのままに記録したビデオテープ」のように信じています。しかし、アドラー心理学は、そこに全く違う光を当てます。
記憶は“客観的な事実”ではなく“主観的な解釈”です
アドラー心理学では、「人間の記憶というものは、その人のライフスタイル(性格や、物事の捉え方のクセ)に合致するものだけが、選び取られる」と考えます。
つまり、あなたの記憶は、客観的な事実を記録したものではありません。 それは、現在のあなたの生き方を正当化し、補強するために、膨大な過去の出来事の中から、あなた自身が(無意識のうちに)選び出し、編集した、一本の“映画”のようなものなのです。 同じ出来事を経験したきょうだいでも、覚えている場面や、その記憶から受け取っているメッセージが全く違うことがあるのは、まさにこのためです。
あなたの“思い出”が、あなたに語りかけていること
では、そのあなたが選び取った記憶は、一体何を語っているのでしょうか。 それは、「過去のあなたは、こうだった」という報告書ではありません。それは、「だから、これからのあなたも、こう生きなさい」という、あなた自身から、あなた自身への、力強い“メッセージ”なのです。
- 失敗や恥の記憶ばかりを思い出す、あなたへ その記憶は、「だから、新しい挑戦をしない方が安全だ」「どうせまた、失敗して恥をかくに決まっている」というメッセージを、あなたに送り続けているのかもしれません。あなたを、失敗のリスクから守るために。
- 誰かに助けられた、愛された記憶を大切にしている、あなたへ その記憶は、「あなたは、一人では生きていけない」「困った時は、誰かが助けてくれるはずだ」というメッセージを、伝えているのかもしれません。あなたに、困難な課題に自ら取り組む必要はない、とささやきかけるために。
- 努力して、何かを成し遂げた記憶を思い出す、あなたへ その記憶は、「困難なことがあっても、努力すれば乗り越えられる」「あなたには、物事を成し遂げる力がある」というメッセージを送っています。今の課題にも、勇気を持って取り組むように、と。
過去の“脚本”を、書き換える勇気
この事実に気づいた時、私たちの目の前には、大きな希望の扉が開かれます。 もしも、その記憶という名の映画が、あなた自身が脚本を書き、編集したものなのだとしたら。 その脚本は、今のあなたが、いつでも書き換えることができる、ということです。
ステップ1:自分の“お決まりの記憶”の「目的」に気づく まずは、「この記憶を思い出すことで、自分はどんなメリットを得ているだろう? 何を避けようとしているだろう?」と、正直に自問してみてください。
ステップ2:過去の出来事に、新しい“意味づけ”を与える かけっこで転んだ記憶。「大勢の前で恥をかいた」という解釈から、「転んでも、最後まで泣かずに立ち上がって走った、なんて勇敢な子どもだったんだろう」と、出来事への意味づけを変えてみるのです。失敗を、勇気の証として、再解釈するのです。
ステップ3:新しいライフスタイルに合った、別の記憶を探してみる あなたの過去には、これまで忘れていた、あるいは些細なことだと思っていた、別の記憶が必ず眠っています。「誰かに親切にできた記憶」「何かに時間を忘れて夢中になった記憶」。これからあなたが紡ぎたい、新しい物語を支えるための、新しい“シーン”を、過去の膨大なフィルムの中から、意識的に探し出してみましょう。
私たちは、過去の奴隷ではありません。 私たちは、過去という、変更不可能な素材を使って、これからの人生を自由に創造していくことができる、人生という名のアートの、アーティストなのです。 あなたの物語の結末は、まだ誰にもわからない、白紙のページなのですから。
ご自身の記憶が、どんなライフスタイルと結びついているのか、一人で分析するのは難しいことかもしれません。また、過去の辛い記憶と向き合うことには、痛みが伴うこともあります。 もしあなたが、過去の物語から自由になり、新しい人生の脚本を書き始めたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、あなたの「早期回想(一番古い記憶)」などを手がかりに、あなたのライフスタイルを安全な空間で一緒に読み解いていきます。そして、過去の出来事への意味づけを書き換え、あなたが望む新しい人生の物語を創造していくための、力強い伴走者となります。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 LINE公式アカウントでは、今後も皆さんの日々の悩みに役立つヒントを配信していきます。ぜひ、友だち追加をしてくださいね。
コメント