日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
「あなたのためを思って」という、魔法の言葉
落ち込んでいる友人を元気づけようと、一生懸命にアドバイスをしたら、なんだか不機嫌になられてしまった。 後輩の仕事のやり方が非効率に見えたので、親切心から丁寧に教えてあげたら、「放っておいてください」と突き放された。 子どもが失敗しないようにと、先回りしてあれこれ口を出したら、「もう、うるさい!」と、ドアをピシャリと閉められてしまった。
こちらには何の悪気もない。100%の善意、「あなたのためを思って」したことなのに…。 なぜか相手の反応は冷たく、時には関係が気まずくなってしまう。この理不尽なすれ違いに、あなたも心を痛めた経験はありませんか。 その「良かれと思って」という、魔法のような言葉の裏側を、少しだけ見つめてみましょう。
その「善意」、本当は誰のため?
アドラー心理学の視点から見ると、その「良かれと思って」という行動の裏には、あなた自身の、こんな無意識の“目的”が隠れているかもしれません。
1.「この人は、一人では解決できない」という、相手への“不信” あなたが先回りして手や口を出すのは、心のどこかで「相手は、自分の力でこの課題を乗り越える能力がない」と信じていないからかもしれません。一見、優しさに見えますが、これは相手を自分より「下」に見ている「縦の関係」の関わり方であり、無意識のうちに相手を見下していることの表れなのです。
2.「自分のやり方が正しい」という、相手への“コントロール欲” 相手には相手のペースや考え方があるにもかかわらず、「自分のやり方が最善だ」と信じて、それを押し付けようとしていないでしょうか。相手を自分の思い通りに動かしたい、という無意識の支配欲が、「親切」という仮面をかぶって現れているのかもしれません。
3.「役に立つ自分でいたい」という、“自己満足” 相手を助けることで、「自分は役に立つ人間だ」「自分は正しいことをしている」という「貢献感」や「優越感」を得たい。相手のため、と言いながら、実は自分の価値を確認するための行為になってはいないでしょうか。
親切とお節介を分ける、たった一つの境界線
では、「本当に相手のためになる親切」と、「ありがた迷惑なお節介」を分ける境界線は、どこにあるのでしょうか。 それこそが、アドラー心理学の中心的な考え方である「課題の分離」です。
相手の課題:悩みをどう乗り越えるか。仕事をどんなやり方で進めるか。失敗から何を学ぶか。これらはすべて、最終的に相手自身が引き受け、解決すべき課題です。
あなたの課題:相手を信じて見守ること。そして、相手から「助けを求められた時に、できる範囲で援助すること」です。
「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲むかどうかは馬自身の課題である」という有名な言葉があります。 良かれと思っての介入は、相手の課題に土足で踏み込み、相手が自ら水を飲む機会、つまり自分で成長する大切な機会を奪ってしまう行為になりかねないのです。
本当の「勇気づけ」とは何か
では、私たちは、困っている人に対して何もしなければいいのでしょうか。いいえ、そうではありません。 お節介な介入ではなく、相手の力を心から信じ、その力を引き出す援助をする。それが、アドラー心理学の言う「勇気づけ」です。
- まず、黙って聴く。 アドバイスしたい気持ちをぐっとこらえ、ただ共感的に耳を傾ける。「そうなんだね」「大変だったね」と、相手の気持ちを受け止めるだけで、相手は自分の力で答えを見つけ始めます。
- 助けを求められるまで、待つ。 「どう思う?」「手伝ってほしい」という明確なサインが出るまで、こちらから手や口を出さない。「あなたなら、きっと自分で解決できる」と、相手の力を信じて待つこと。それこそが、最高の勇気づけです。
- 援助はするが、解決はしない。 助けを求められたとしても、答えをすべて教えたり、代わりに全部やってあげたりはしません。「私にできることはある?」「一緒に考えてみようか」と、あくまで本人が主体的に課題に取り組むのを、横からサポートするスタンスを保ちます。
本当の親切とは、相手の課題を肩代わりすることではありません。 相手が、自分の足で、自分の課題を乗り越えられると信じ抜くこと。 その信頼の眼差しこそが、相手の内に眠る「乗り越える力」を目覚めさせるのです。
良かれと思ってしたことが裏目に出てしまう、そのパターンがなかなか変えられない。自分の親切が、実は相手を見下す行為だったと気づいて、ショックを受けている。そんな方もいらっしゃるかもしれません。 もし、あなたがその長年の関わり方の癖を見つめ直し、本当の意味で相手の力になる「勇気づけ」を身につけたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、あなたの「良かれと思って」という行動の裏にある、本当の「目的」やライフスタイルを安全な空間で探求します。そして、「課題の分離」を身につけ、お節介ではない、温かい勇気づけができるようになるための具体的な練習を、一緒に始めましょう。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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