日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
我が家に、小さな“哲学者”がやってきた
ある日のこと。もしも、 あなたの小学生のお子さんが、テレビゲームの手を止め、達観した目であなたをじっと見つめ、こう語り始めたとしたら、どうでしょう。 「お母さん、今のその関わり方は、僕の勇気をくじいているかもしれないよ」と。
私たちは日々、良かれと思って、子どもを褒めたり、叱ったり、心配したりしています。 しかし、もし子どもが、そんな私たちの一挙手一投足を、アドラー心理学の視点から冷静に分析し、フィードバックをくれたとしたら…。 少しだけ、そんな不思議な空想の物語にお付き合いください。そこには、子育てにおける、最も大切なヒントが隠されているかもしれません。
アドラー君の“ありがたい”ダメ出し語録
シーン1:子どもがテストで100点を取って、あなたに見せに来た時
あなた:「すごいじゃない!えらいわね!本当に頭がいいのね!」
すると、アドラー君は少し困ったような顔で、こう言います。 「ありがとう。でも、僕を“評価”するのはやめてほしいな。それは、お母さんと僕の間に、能力のある人がない人を見る“縦の関係”を作ってしまうから。それよりも、『たくさん勉強したんだね、その頑張りが、私は嬉しいな』と、僕がしたことへの敬意と、お母さんの気持ち(Iメッセージ)を伝えてくれる方が、僕の本当の勇気になるんだ」
彼は、結果を「褒める」ことが、いかに危険であるかを教えてくれます。褒められなければ行動しない子になるか、常に評価を恐れる子になるかの、どちらかになってしまうからです。
シーン2:子どもが宿題をせず、あなたがイライラしている時
あなた:「早く宿題やりなさい!やらないと、後で困るのはあなたよ!」
アドラー君は、あなたの目を見て、冷静にこう答えます。 「お母さん、宿題をするかしないかは、“僕の課題”だよ。その結果、困ることがあっても、それを引き受けるのは僕自身だ。お母さんが、僕の課題に土足で踏み込むのはやめてほしいな。それに、そのイライラは、僕を思い通りにコントロールするための“道具”として、お母さんが今、作り出した感情だよね?」
彼は、アドラー心理学の核心である「課題の分離」の原則を、私たちに突きつけます。そして、私たちの「怒り」が、相手を支配するための「目的」を持った、二次的な感情であることを、見抜いているのです。
シーン3:子どもが、友達と喧死して、あなたが心配している時
あなた:「大丈夫?一体何があったの?どっちが悪いの?」
アドラー君は、少しうつむきながらも、はっきりとした口調で言います。 「心配してくれて、ありがとう。でもね、お母さん。僕には、自分でこの問題を解決する力があると“信じて”ほしいんだ。お母さんが僕の力を信じてくれないことの方が、喧嘩よりも、僕の勇気をくじくんだよ。もし、本当に助けが必要になったら、その時は僕からちゃんと言うから、それまで見守っていてくれる?」
彼は、過剰な心配が、子どもに対する「あなたには能力がない」という、不信のメッセージになってしまうことを教えてくれます。信頼して待つこと。それこそが、最高の勇気づけなのです。
シーン4:子どもがお手伝いをしてくれ、あなたが「ありがとう」と言った時
あなた:「ありがとう、助かったわ」 アドラー君:「どういたしまして!」 あなた:「本当にえらいわね」
アドラー君は、少し考えてから、こう補足します。 「お母さん、僕がお手伝いをするのは、褒められたいからじゃないんだ。僕は、この家族という共同体の一員として、役に立ちたいだけなんだよ。だから、『ありがとう』の言葉だけで、僕は十分に“貢献感”を感じられる。そして、『あなたがいてくれるだけで、嬉しい』って思ってくれることが、僕にとって一番の勇気になるんだ」
彼は、人の本当の幸せが、誰かに褒められることではなく、「自分は、共同体の役に立っている」という「貢献感」と、「自分は、ここにいていいんだ」という「所属感」の中にあることを、私たちに思い出させてくれるのです。
家庭という名の、最高の“学びの場”
もちろん、こんな小学生は、どこにもいません。 しかし、私たちの子どもは、日々、その素直な言動を通して、私たち親に多くの「気づき」を与えてくれているのではないでしょうか。
子どもを「未熟な存在」として、上から教え導くのではなく、一人の対等な人間として、その声に耳を澄まし、共に学ぶ「仲間」として関わること。 その時、家庭は、親が子を一方的に育てる場所ではなく、親もまた、子どもから人生で最も大切なことを教わる、最高の「学びの場」へと変わっていくはずです。
頭ではわかっていても、長年の癖で、つい子どもを褒めたり、叱ったり、課題に介入してしまったりする。そんな自分に、落ち込んでしまうこともあるでしょう。 もし、あなたがその関わり方を変え、お子さんとの間に、本当の信頼と尊敬に基づいた関係を築きたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、まず親御さん自身のライフスタイル(子育ての思い込み)を見つめ直し、なぜ「縦の関係」の関わりをしてしまうのかを探求します。そして、お子さんを本当に勇気づけるための、具体的な「横の関係」のコミュニケーションを、一緒に練習していきましょう。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 LINE公式アカウントでは、今後も皆さんの日々の悩みに役立つヒントを配信していきます。ぜひ、友だち追加をしてくださいね。
コメント