日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
明日やろう、明後日やろう…気づけば締め切り前夜
子どもの頃、夏休みの宿題は、いつも8月31日に泣きながらやっていた。 大人になった今も、「まだ時間はたっぷりある」と思っているうちに、気づけば仕事の締め切り前日。徹夜でなんとか間に合わせる。 面倒な電話やメールの返信を、見て見ぬふりをして、どんどん未読が溜まっていく。 そして、心の中で何度も唱える。「ダイエットは、明日から…」
この「後でやろう」という魔法の言葉は、一瞬、私たちをやるべきことのプレッシャーから解放し、安心させてくれます。しかし、その魔法が解けた時、私たちを待っているのは、さらに大きくなったストレスと、「どうして、もっと早くやらなかったんだろう」という、深い自己嫌悪です。
「先延ばし」という名の、巧妙な自己防衛
「自分は、なんて怠け者なんだろう」 そう自分を責めてしまうかもしれませんが、アドラー心理学の「目的論」の視点から見ると、それは単なる性格の問題ではないのかもしれません。 あなたは、「怠け者だから」先延ばしにするのではなく、「“課題と向き合わない”という目的」を達成するために、『先延ばしにする』という行動を、無意識のうちに選択しているのかもしれないのです。
では、その“目的”とは何でしょうか。
一つは、「完璧主義からの逃避」です。 「やるからには、完璧に仕上げなければならない」という思いが強すぎると、そのプレッシャーに耐えきれず、始めること自体が怖くなります。「まだ完璧な準備ができていないから」と言い訳をして、先延ばしにするのです。
もう一つは、「失敗への恐怖」です。 もし、十分な時間をかけて取り組んで、それでもうまくいかなかったら、「自分は能力がない」という事実を、自分自身にも、周りにも証明してしまうことになる。それが怖いのです。 締め切り間際に慌ててやれば、「時間がなかったから、実力が出せなかっただけだ」という、便利な言い訳が用意できます。つまり、自分の“本当の実力”が試されることから、自分を守っているのです。
巨大な壁を、小さな“レンガ”に分解する
この、苦しい無限ループから抜け出すための鍵は、課題に対する「見方」を変えることです。
私たちが先延ばしにする時、目の前の課題を、まるで「巨大で、一度に登りきらなければならない、一枚岩の壁」のように認識してしまっています。その壮大さに圧倒され、立ちすくんでしまうのです。
そうではなく、その壁を、一つひとつ、片手で運べるくらいの、小さな「レンガ」にまで、徹底的に分解するのです。
例えば、「企画書を作成する」という巨大な壁。 これを、次のような小さなレンガに分解してみましょう。
- レンガ1:テーマに関するキーワードを、思いつくだけ書き出す。(5分)
- レンガ2:参考になりそうな資料を、インターネットで1つだけ探す。(10分)
- レンガ3:企画書の目次案を、箇条書きで3つほど考えてみる。(10分)
どんなに巨大に見える壁も、必ず、こうした小さなレンガの集合体でしかありません。大切なのは、壁全体を一度にやろうとするのではなく、目の前にある、最初のレンガ一つを動かすことに、全神経を集中させることなのです。
「5分だけ」で、脳を味方につける
課題をレンガに分解できたら、次はその最初の一つを動かすための、具体的なスイッチを入れましょう。
「5分だけルール」を試してみてください。 「めんどくさいな」「やる気が出ないな」と感じる時こそ、「わかった、じゃあ、たった5分だけやってみよう」と自分に言い聞かせます。 5分経ったら、やめても構いません。しかし、多くの場合、一度手をつけ始めると、脳が「作業興奮」という状態に入り、そのまま続けられることが多いのです。
これは、アドラー心理学が言う「今、ここを、真剣に生きる」という姿勢そのものです。 課題全体のことを考えて未来を憂うのではなく、「今、この瞬間」にできる、たった一つのレンガを運ぶことに集中する。 「後でやろう」という未来への逃避をやめ、「今、5分だけやろう」という、ささやかで、しかし力強い一歩を踏み出すこと。
その一歩の積み重ねだけが、あなたを「先延ばし」という名の無限ループから、確実に解放してくれるのです。
長年の先延ばし癖は、根深いライフスタイルや、失敗への強い恐怖心と結びついています。一人では、課題を分解したり、最初の一歩を踏み出したりするのが難しいと感じるかもしれません。 もし、あなたがその苦しいループから抜け出し、軽やかに行動できる自分になりたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、あなたがなぜ先延ばしにしてしまうのか、その本当の「目的」を安全な空間で一緒に探求します。そして、課題と向き合い、具体的な行動を起こしていくための「勇気づけ」と、実践的なスキル習得を、伴走者としてサポートさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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