日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
「あの人に比べて、自分は…」
同僚の鮮やかなプレゼンを見て、「それに比べて自分は…」と落ち込む。 SNSで友人の充実した休日を眺め、「それに比べて自分は…」とため息をつく。 雑誌のモデルを見て、「もっとスタイルが良かったら…」と鏡の前で憂鬱になる。
こうした「劣等感」は、私たちにとって非常に身近な感情です。 アドラー心理学の創始者アルフレッド・アドラーは、「劣等感は病気ではない。むしろ、努力と成長への刺激である」と述べました。
そう、劣等感そのものは、決して悪いものではありません。 「もっと良くなりたい」「もっと成長したい」という向上心の源泉であり、人類が文明を発展させてきた原動力とも言える、健全で自然な感情なのです。 しかし、この「劣等感」とよく似た顔をした、非常に厄介な存在があります。
あなたを縛る「劣等コンプレックス」の正体
アドラー心理学では、「劣等感」と「劣等コンプレックス」を明確に区別します。 この二つの違いを理解することが、悩みから抜け出すための重要な鍵となります。
- 劣等感:目標と現在の自分とのギャップから生じる、健全な気持ち。「もっと勉強しよう」「練習しよう」という、未来に向けたバネになる。
- 劣等コンプレックス:「自分は学歴が低いから、成功できない」「口下手だから、人と打ち解けられない」というように、劣等感を“言い訳”にして、人生の課題から逃げようとする態度のこと。
お分かりでしょうか。「劣等コンプレックス」に陥っている時、私たちは「〇〇だから、Bはできない」という、一見もっともらしい理屈を並べて、行動しない自分を正当化します。 「どうせ自分なんて…」という言葉で目の前の課題と向き合うことを諦め、安全地帯に引きこもってしまうのです。 これは、人生の様々な課題(仕事、交友、愛など)に立ち向かう勇気をくじかれた状態と言えます。
意外な兄弟?「優越コンプレックス」
さらに、この劣等コンプレックスには、「優越コンプレックス」という双子の兄弟がいます。 これは、あたかも自分が優れているかのように振る舞い、偽りの優越感に浸ることで、心の奥底にある強い劣等感を隠そうとする態度です。
- 過去の栄光や武勇伝ばかり語る人
- ブランド物や肩書など「権威」の力を使って自分を大きく見せようとする人
- 他人の欠点を探してはこき下ろし、相対的に自分の価値を上げようとする人
あなたの周りにも、思い当たる人はいませんか? 彼らは一見、自信満々に見えるかもしれません。しかし、その行動の裏には、実は「ありのままの自分では価値がない」という、強烈な劣等感が隠れています。 本当に自分に価値があると思えている人は、わざわざ自慢したり、他人を見下したりする必要がないのです。
コンプレックスの鎖を断ち切るために
では、私たちを不自由にさせる劣等コンプレックスの鎖を断ち切るには、どうすればいいのでしょうか。
まず第一に、自分の「言い訳」に気づくことです。 「〇〇のせいだ」という言葉が頭に浮かんだら、「本当にそうだろうか? それを理由に、何から逃げようとしているのだろう?」と、自分に問いかけてみてください。
次に、不完全な自分を、そのまま受け入れる勇気を持つことです。 完璧な人間など、どこにもいません。「今の自分」というスタート地点を認めなければ、一歩も前に進むことはできません。
そして最後に、とにかく具体的な一歩を踏み出すことです。 それは、途方もなく大きな目標である必要はありません。人前で話すのが苦手なら、まずは一日一回、コンビニの店員さんに「ありがとう」と言ってみる。それだけでも立派な一歩です。 その小さな行動が、「自分にもできる」という自信につながり、他者や社会に貢献しているという「貢献感」が、くじかれた勇気を回復させてくれます。
アドラーが言うように、「人間の価値は、何を持っているかではなく、持っているものをどう使うかによって決まる」のです。 あなたが今持っているカードで、できることは必ずあります。
長年抱え込んできたコンプレックスは、一人で向き合うには手強い相手かもしれません。自分の「言い訳」に気づくことは、時に痛みを伴う作業でもあります。 もし、その鎖を断ち切るためのサポートが必要だと感じたら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、あなたが安全だと感じられる空間で、そのコンプレックスが果たしている本当の「目的」を一緒に探ります。そして、あなたを縛り付けている思い込みを、一つひとつ丁寧に解きほぐしていくお手伝いをします。
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お会いできるのを楽しみにしています。
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