日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
Q. 相手と意見が違う時、つい黙ってしまいます。どうすれば上手に伝えられますか?
ご質問、ありがとうございます。これは非常に多くの方が抱える悩みですね。
会議で「何か違うな」と感じても、言葉を飲み込んでしまう。友人の話に違和感を覚えても、「そうだね」と曖昧に相槌を打ってしまう。
「ここで反論したら、相手を傷つけてしまうかもしれない」 「場の空気を悪くするくらいなら、私が我慢すればいい」
そんな思いから、結局黙ってしまう。そして後から一人でモヤモヤする…。そのお気持ち、とてもよくわかります。
なぜ私たちは「黙ってしまう」のでしょうか?
アドラー心理学の視点で見ると、意見が言えなくなる背景には、いくつかの思い込みが隠れています。
一つは、意見の対立を「戦い」や「勝ち負け」だと捉えていること。 自分の意見が通れば「勝ち」、相手の意見が採用されたら「負け」そんなふうに無意識に考えていると、戦いを仕掛けることにも、負けることにも恐怖を感じてしまい、黙るという「安全策」を選んでしまいます。
また、相手との関係を「縦の関係」で捉えているのかもしれません。 「上司(上)の意見に、部下(下)の私が口を挟むなんて…」というように、相手を自分より上の存在と見なしていると、意見を言うこと自体が失礼にあたるように感じてしまいます。これでは、対等な議論などできるはずがありません。
対立は「戦い」ではなく「協力」の始まり
もし、あなたがもっと楽に自分の考えを伝えたいと願うなら、まずはこの「対立=戦い」というイメージを書き換えるところから始めてみましょう。
アドラー心理学では、意見の違いは、より良い結論にたどり着くための貴重な「材料」だと考えます。 一人では見えなかった角度、気づかなかったリスク、思いもよらなかったアイデア。異なる意見がぶつかり合うからこそ、物事はより良く、より深まっていくのです。つまり、対立は、破壊的な戦いではなく、創造的な「協力」のスタートラインなのです。
そして、上司や先輩、同僚との関係を「縦」ではなく「横の関係」で捉え直してみましょう。 役割や経験年数、責任の範囲は違っても、人としての価値はまったくの対等です。相手への尊敬の気持ちを忘れずに、しかし、あなたもチームを良くするための対等なパートナーとして、議論の場に立つ。そう意識を変えるだけで、意見を言うことへの心理的なハードルはぐっと下がるはずです。
上手に伝えるための「魔法の言葉」
そうは言っても、どう伝えれば角が立たないのか、不安になりますよね。そこで、誰でもすぐに実践できる、アサーティブ(誠実で対等)な伝え方の3ステップをご紹介します。
ステップ1:まずは「受け止める」 相手の意見をいきなり否定するのではなく、まずは「なるほど」「そういう視点もありますね」と、一度クッションを置きます。これは、あなたの意見をちゃんと聞きましたよ、という敬意の表明です。
ステップ2:「私」を主語にして伝える 「それは違います」ではなく、「『私』は少し違う角度から考えたのですが」と、主語を「私(I)」にして伝えます。これは「I(アイ)メッセージ」と呼ばれる手法で、断定的な響きを和らげ、あくまで一個人の意見として柔らかく伝えることができます。
ステップ3:「提案」や「質問」の形で締めくくる 「こうするべきです!」と結論を押し付けるのではなく、「もしよろしければ、〇〇という方法も一緒に検討してみませんか?」「この点について、皆さんはどう思われますか?」と、みんなで考える形にしてみましょう。
まとめると、こんなイメージです。 「なるほど、〇〇というご意見ですね。私は、コスト面で△△という点が少し気になったのですが、もしよろしければ、その点も踏まえて再度検討してみるのはいかがでしょうか?」
これなら、相手を否定することなく、自分の考えを伝えられそうだと思いませんか?
黙っていることは、一見すると安全な選択かもしれません。しかしそれは、チームがより良い答えにたどり着くための、あなたにしか提供できない貴重な「材料」を、差し出さずにいることでもあります。
あなたの言葉は、わがままな自己主張ではありません。 共同体をより良くするための、あなただからこそできる立派な「貢献」なのです。そのことを、どうか忘れないでください。
頭ではわかっていても、一歩を踏み出すのには勇気がいるものです。もし、具体的な状況でどう伝えればいいか迷ったり、どうしても恐怖心が拭えなかったりする時は、ぜひ一度お話ししに来てください。一緒に練習しながら、あなたらしい伝え方を見つけていきましょう。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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