職場で「NO」と言えないのは、あなたの“優しさ”のせいじゃない

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

積み重なるタスクと、すり減っていく心

自分の仕事で手一杯なのに、上司や同僚から「ごめん、これお願いできる?」と頼まれると、つい笑顔で「はい、大丈夫です!」と引き受けてしまう。 明らかに自分の担当ではない雑務を押し付けられても、「まあ、自分がやった方が丸く収まるか…」と、ぐっと我慢してしまう。

気づけば、デスクの上には仕事の山。周りの同僚が次々と退社していく中、一人残業しながら、心の中では「どうして自分ばかり…」という不公平感と、断れない自分への不甲斐なさで、ため息をつく。 あなたにも、そんな経験はありませんか。

それは「優しさ」という、心地よい勘違い?

「NO」と言えない自分に対して、「自分は人がいいから」「頼られると断れない、優しい性格だから」と、自分を納得させてはいないでしょうか。 その考え方は、一見すると自分を肯定しているようで、実は本当の問題から目をそらすための、心地よい“勘違い”になっているのかもしれません。

アドラー心理学の視点から、その行動の裏にある本当の“目的”を探ると、それは「優しさ」という美しい言葉ではなく、もっと根深い「恐怖心」にたどり着きます。

  • 嫌われるのが怖い:「NO」と言って相手をがっかりさせ、関係性が気まずくなることを恐れている。

  • 無能だと思われるのが怖い:「断ったら、自分の存在価値がない、仕事ができない人間だ、と評価されるのではないか」と恐れている。

  • 対立するのが怖い:波風を立てるのが面倒で、自分が我慢すれば済む、と考えてしまう。

つまり、「NO」と言えないのは、相手を思いやる「利他的な優しさ」からではなく、他者からのネガティブな評価を恐れ、自分を守ろうとする「自己中心的な恐怖」から来ているのかもしれないのです。 この事実に気づくことは、少し痛みを伴うかもしれませんが、問題解決のための、非常に重要な第一歩です。

「NO」は攻撃ではなく、“健全な境界線”

私たちは、「NO」と言うことに、どこかネガティブなイメージを持っています。相手を拒絶する、冷たい言葉。相手を攻撃する、わがままな態度。 しかし、これは大きな誤解です。

「NO」と言うことは、あなたと相手の間に、健全な「境界線(バウンダリー)」を引くための、極めて重要で、誠実なコミュニケーションなのです。

ここで「課題の分離」をしてみましょう。 あなたの時間や能力、心身の健康を守り、自分の仕事に責任を持つことは、「あなたの課題」です。 一方、あなたが断ったことに対して、相手がどう感じるか(がっかりするか、理解してくれるか)は、「相手の課題」です。

相手の課題にまで踏み込んで、「がっかりさせないように…」と無理を重ねれば、いずれあなたはパンクしてしまいます。そして、仕事の質が落ちたり、溜め込んだ不満が爆発して人間関係を壊してしまったりする方が、よほど組織やチームにとって不利益な結果を招くのです。

罪悪感なく「NO」を伝える、大人の断り方

では、どうすれば相手を尊重しつつ、自分も守る「NO」が言えるのでしょうか。 それは、ただ拒絶するのではなく、自分も相手も大切にする、誠実な自己表現(アサーション)を意識することです。

1.まずは、感謝と共感を示す いきなり「できません」と切り出すのではなく、「お声をかけていただき、ありがとうございます」「〇〇の件で、大変なのですね」と、まずは相手の依頼や状況を受け止める姿勢を見せます。

2.できない理由を、客観的に、簡潔に伝える 「大変申し訳ないのですが、今、△△という案件の締め切りを抱えておりまして…」というように、長々と自分語りをするのではなく、客観的な事実を簡潔に伝えます。

3.断りの言葉を、明確に、しかし丁寧に伝える 「ですので、残念ながら今回はお引き受けすることができません。ご期待に添えず、申し訳ありません」と、曖昧にせず、はっきりと「NO」を伝えます。

4.代替案や協力の意思を示す(可能であれば) 「もしよろしければ、来週であれば少しお時間を取れるのですが…」「この件でしたら、〇〇さんの方が詳しいかもしれません」といった代替案を添えることで、相手を助けたいというあなたの前向きな気持ちが伝わります。

「NO」とは、関係を断ち切る言葉ではありません。 むしろ、お互いの状況を尊重し、より良い協力関係を築いていくための、誠実な対話の始まりなのです。


頭ではわかっていても、いざ上司や先輩を目の前にすると、言葉に詰まってしまう。断った後の、あの気まずい空気を想像すると、どうしても勇気が出ない。そんな気持ちも、よくわかります。 もし、あなたが「NO」と言えない自分を変え、健全な人間関係を築きたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。

カウンセリングでは、あなたが「NO」と言えない背景にある、根深い恐怖心やライフスタイルを安全な空間で探求します。そして、具体的な場面を想定した練習などを通して、あなたらしい誠実な自己表現の方法を、一緒に見つけていきましょう。


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