日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
「自分を好きになろう」という、高すぎるハードル
「ありのままの自分を好きになろう」 「もっと自信を持って、ポジティブに生きよう」
世の中には、自己肯定感を高めるための、こうしたキラキラしたメッセージが溢れています。しかし、長年「どうせ私なんて…」という思いを抱えてきた人にとって、この言葉は時に、あまりにも高く、険しいハードルに感じられるのではないでしょうか。
「好きになろう」とすればするほど、好きになれない部分ばかりが目に付いてしまう。 ポジティブになろうとすればするほど、なれない自分に落ち込んで、自己嫌悪が深まっていく。 そして、ついには「こんな自分を好きになれるわけがない」と、スタートラインに立つことすら諦めてしまう…。
もし、あなたがそんな苦しいループの中にいるのなら、一度、その高すぎるハードル自体を、取り払ってみませんか。
アドラー心理学からの提案「自己受容」から始めよう
アドラー心理学では、「自分を好きになる(自己肯定)」の前に、もっと大切で、もっと現実的な土台があると考えます。それが「自己受容」です。
この二つは、似ているようで全く違います。
- 自己肯定とは、「自分はできる」「自分は素晴らしい」と、ポジティブな側面に目を向けて自分を高く評価すること。これは、できている自分には有効ですが、できていない自分には適用しにくい、いわば“加点法”のアプローチです。
- 自己受容とは、「できる自分」も「できない自分」も、長所も短所も、すべてひっくるめて「これが、今の私だ」と、ありのままに、評価(ジャッジ)せずに受け入れることです。
100点満点の完璧な自分を目指すのではなく、「今は60点かもしれないけど、そんな自分にOKを出そう」という、穏やかな姿勢。 そこには、「好き」という強い感情は必要ありません。「好きにはなれないかもしれないけれど、まあ、これが私だから仕方ないか」と、静かに事実を受け入れる。その、ある種の“覚悟”にも似た感覚こそが、自己受容のスタートラインなのです。
欠点だらけの自分に「OK」を出す、具体的な練習
では、どうすれば自分に「OK」を出せるようになるのでしょうか。
ステップ1:「変えられるもの」と「変えられないもの」を仕分ける まず、自分のコンプレックスや課題を、「自分の努力で変えられること(例:知識、スキル、今日の行動)」と、「変えられないこと(例:過去の出来事、生まれ持った気質)」に分けてみましょう。そして、「変えられないもの」について悩むのを、今日でやめる、と決断するのです。これは、自分の力を、本当に意味のあることに集中させるための、大切な作業です。
ステップ2:自分の“欠点”の「目的」を探ってみる あなたが「欠点」だと思っているその性質は、実は、あなたを何かから守るための、不器用な工夫なのかもしれません。 例えば、「優柔不断」という欠点は、「物事を慎重に考え、大きな失敗のリスクを回避する」という“目的”を果たしているかもしれません。「人見知り」は、「むやみに人と関わって傷つくことから、自分を守る」という目的があるのかも。 そのように捉え直すと、欠点も少しだけ、愛おしく思えてきませんか。
ステップ3:小さな「できたこと」に、毎日注目する 私たちは、つい「できなかったこと」ばかりを数えて自分を責めてしまいがちです。その癖をやめて、「今日できたこと」を、どんなに小さなことでもいいので3つ、見つけてみましょう。 「朝、時間通りに起きられた」「人に笑顔で挨拶ができた」「頼まれた仕事を一つ終わらせた」。 この「できた」という事実の積み重ねが、「自分も、まんざら捨てたもんじゃないな」という、静かな自信を育んでくれます。
自分に価値があると思える、本当の瞬間
そして、アドラー心理学が最終的に示す道は、自分自身の内側だけを見つめ続けることではありません。 人が本当に「自分には価値がある」と思えるのは、「私は、この共同体(社会や周りの人々)の役に立っている」という「貢献感」を抱けた時なのです。
「自分を好きになろう」と、自分の心ばかりをこねくり回すのをやめて、外に目を向けてみましょう。 「自分は、誰のために、何ができるだろう?」 大げさなことでなくていいのです。家族のために食事を作る。職場でゴミが落ちていたら拾う。友人の話を、ただ真剣に聞く。
その小さな貢献が、誰かの「ありがとう」に繋がり、その「ありがとう」が、何よりも確かな「あなたは、ここにいていいんだよ」というメッセージとなって、あなたの心に返ってくるのです。 自己受容という土台の上に、他者貢献という柱を立てる。その時、あなたの自信は、誰かと比べる必要のない、揺るぎないものになるはずです。
長年の自己否定の癖は根深く、一人で自分にOKを出すのは難しいことかもしれません。「貢献」と言われても、自分にできることなんて何もない、と感じてしまうこともあるでしょう。
カウンセリングは、あなたが「ありのままの自分」を安心してさらけ出せる最初の場所であり、自己受容のプロセスを一緒に練習する場所です。そして、あなただけの「貢献」の形を見つけ、自分に価値があると思えるようになるためのサポートをさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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