日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
褒められているのに、なぜか苦しい
仕事で大きな成果を出し、上司から「すごいじゃないか、よくやった!」と褒められた。それなのに、心の中では「いえ、今回はたまたま運が良かっただけです…」と、必死にその言葉を打ち消している自分。 友人から「いつも頑張っていて、本当にえらいね」と言われても、「本当の私を知らないくせに…」と、素直に受け取ることができない。
周りからは「順調でいいね」「完璧だね」と言われれば言われるほど、本当の自分とのギャップに、まるで自分が“詐欺師”にでもなったかのような、罪悪感と孤独感が募っていく。そして、「いつか、自分の無能さがバレてしまうのではないか」という、漠然とした恐怖に、常に怯えている。 あなたにも、そんな経験はありませんか。
その“ズレ”は、どこから来るのか?
この、他者からのポジティブな評価と、自分自身のネガティブな自己評価との間に生じる、苦しい“ズレ”。それは、一体どこからやってくるのでしょうか。 アドラー心理学の視点から見ると、いくつかの原因が考えられます。
一つは、あなたが自分自身に課している「こうあるべきだ」という理想像(自己理想)が、あまりにも高すぎることです。 現実の自分は、どんなに頑張ってもその高すぎる理想には届かない。だから、他者から見れば十分な成果であっても、あなたの中では常に「まだまだだ」「不十分だ」という感覚が残ってしまうのです。
また、自分のことを、常に「できていないこと」「足りないこと」ばかりに目を向ける「減点法」で評価する癖(ライフスタイル)があるのかもしれません。100点満点のうち、たとえ90点できていたとしても、残りの「できなかった10点」ばかりを気にして、自分を責め続けてしまうのです。
「他者の評価」と「あなたの価値」を分離する
この苦しい“ズレ”から抜け出すための鍵は、アドラー心理学の中心的な考え方である**「課題の分離」**にあります。
冷静に、線を引いてみましょう。
- 他者の課題:あなたの仕事や行動を見て、どう評価するか。「すごい」と思うか、思わないか。褒めるか、褒めないか。それは、すべて相手の課題であり、あなたがコントロールできることではありません。
- あなたの課題:自分がしたことに対して、自分自身がどう向き合うか。そして、他者からの評価を、どう受け取るか。
他者からの「すごいね」という言葉は、あくまで「その人が、その瞬間に、そのように感じた」という、相手の主観的な事実でしかありません。それを、あなたの人間としての価値と、イコールで結びつける必要は全くないのです。 そして同時に、あなた自身の厳しい自己評価もまた、絶対的な真実ではないのかもしれません。それも、あなたのライフスタイルが生み出した、一つの“思い込み”に過ぎないのですから。
自分に、優しい“まなざし”を向ける練習
では、具体的にどうすれば、このズレを乗りこなし、心を軽くすることができるのでしょうか。
ステップ1:「加点法」で、自分を見る練習をする 一日の終わりに、「今日できなかったこと」を数えて反省するのはやめにしましょう。代わりに、「今日、できたこと」を、どんなに小さなことでもいいので3つ、見つけてみてください。「朝、時間通りに起きられた」「人に笑顔で挨拶ができた」「頼まれた仕事を一つ、終わらせた」。この「できた」という事実に目を向ける癖が、減点法の思考を少しずつ変えていきます。
ステップ2:褒められたら、まず「ありがとう」と受け取る 「すごいね」と言われた時、「いえ、そんなことないです」と反射的に否定するのをやめて、まずは「ありがとうございます」と、相手の言葉(親切)をそのまま受け取ってみる練習をしましょう。その評価が正しいかどうかを判断する必要はありません。ただ、相手がそう感じてくれたという事実を、一度受け止めてみるのです。
ステップ3:「貢献感」に、価値の基準を置く 「すごいかどうか」「完璧かどうか」という評価軸から、「誰かの役に立てたかどうか」という「貢献感」へと、価値の基準をスライドさせてみましょう。 たとえ完璧な出来ではなくても、あなたの仕事が誰かの助けになったのなら、それで十分、価値があるのです。この「貢献感」こそが、他者の評価に左右されない、揺るぎない自己価値の、本当の土台となってくれます。
あなたは、誰かの期待に応えるために生きているのではありません。 そして、あなた自身の高すぎる理想を満たすためだけに、生きているのでもありません。 少しだけ、自分へのまなざしを優しくして、今のあなたの、ありのままの姿にOKを出してあげませんか。
長年の自己否定の癖や、完璧主義的な考え方は、一人で変えるのが難しいものです。褒められるたびに罪悪感を感じる、その苦しいループから抜け出したいと思いませんか。 もし、あなたがその“ズレ”に悩み、もっと穏やかな心で自分を受け入れたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、あなたの自己評価がなぜそれほど厳しくなってしまったのか、そのライフスタイルの成り立ちを安全な空間で探求します。そして、「課題の分離」を身につけ、あなた自身に優しいまなざしを向けられるようになるための具体的な練習を、伴走者としてサポートさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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