日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
息をひそめる、会議室の片隅で
会議で、議論が白熱している。自分は、少し違う視点を持っている。でも、「今、これを言ったら、場の空気を壊してしまうんじゃないか…」と、喉まで出かかった言葉を、ぐっと飲み込んでしまう。 友人たちの会話。「わかるー!」「だよねー!」という共感の嵐の中で、自分だけが「そうかな…?」と感じている。でも、その違和感を口に出せず、ただ笑顔で頷き続ける。
そして、会議室やカフェを出た後、一人になってから、激しく後悔するのです。 「なぜ、あの時、何も言えなかったんだろう」と。 自分の意見を飲み込み、「空気を読む」という名の自己消去を繰り返した結果、あなたは、その場に「いてもいなくても同じ存在」のように感じてしまい、深い虚しさに襲われてはいませんか。
あなたが恐れている「空気」の正体
なぜ、私たちはこれほどまでに、「空気が読めない」と思われることを、恐れてしまうのでしょうか。 あなたが恐れている、その目に見えない「空気」の正体。それは、突き詰めれば「他者からのネガティブな評価」そのものです。
「和を乱す、協調性のない人間だ」 「突飛なことを言う、変わった人間だ」 「物事の本質がわかっていない、愚かな人間だ」
こうした評価を下され、共同体から疎外されること、嫌われることを、何よりも恐れている。それは、あなたの価値を、他者の評価に依存させてしまっている、承認欲求の表れなのです。
「同調」と「協力」は、全くの別物です
ここで、アドラー心理学が示す、非常に重要な区別についてお話しします。 それは、「同調」と「協力」は、全く違うということです。
- 同調とは、自分の意見を殺し、他者の意見に、ただ合わせること。これは、対立を恐れる、不健全な自己防衛です。一見すると「和」を保っているように見えますが、そこには本質的な議論も、新しい創造も生まれません。
- 協力とは、たとえ意見が違っていても、お互いを対等な仲間として尊重し、より良い結論を目指して、共に貢献しようとすること。そのためには、多様な意見が表明されることが、不可欠なのです。
驚くべきことに、あなたが「空気を読んで」黙っていることは、実は、その共同体から、新しい視点や、より良い解決策が生まれる可能性を、あなた自身が奪っている、ということにもなるのです。
“相槌”を、未来を変える“一言”に変えるために
では、どうすれば、この恐怖を乗り越え、自分の意見を表明できるようになるのでしょうか。
ステップ1:「課題の分離」という、お守りを心に持つ まず、「自分の意見を、誠実に伝える」ことは、あなたの課題です。 そして、「その意見を、相手がどう受け止め、どう評価するか」は、相手の課題です。 「空気が読めない」と思われるかどうかは、あなたにはコントロールできません。その、どうにもならないことで悩むのを、やめる。そう、決意するのです。
ステップ2:「否定」ではなく、「提案」の形で話す 「あなたの意見は間違っている」という、対立の構図を作るのはやめましょう。 代わりに、「なるほど、そういう考え方もありますね。そして、私としては、こういう視点もあるかと思うのですが、いかがでしょうか?」と、相手の意見を一度受け止めた上で、新しい選択肢を“付け加える”という形で話すのです。
ステップ3:まず、「質問」から始めてみる いきなり自分の意見を言うのが怖いなら、「その点について、もう少し詳しく教えていただけますか?」「〇〇という可能性については、どうお考えですか?」と、質問することから始めてみましょう。質問は、あなたの関心と貢献の意思を示す、最も安全で、建設的な第一歩です。
あなたの意見は、たとえ少数派であったとしても、その共同体にとって、新しい光を当てる、かけがえのない贈り物かもしれません。 空気を「読む」だけの受け身の存在から、あなたの勇気ある一言で、より良い空気を「創る」主体的な存在へ。 その役割を、あなた自身が、今日から引き受けてみませんか。
どうしても、「変に思われたらどうしよう」という恐怖が先に立ってしまう。自分の意見に自信が持てず、口に出すことができない。その苦しいお気持ち、よくわかります。
カウンセリングは、あなたがなぜ他者の評価を過剰に恐れてしまうのか、その背景にあるライフスタイルを探求し、あなたを縛っている思い込みを解きほぐす場所です。そして、自分の意見を、自信をもって、かつ建設的に表明するための、具体的なコミュニケーションの練習を、伴走者としてサポートさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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