褒めない、叱らない。じゃあ、どうするの? – アドラー式「勇気づけ」の子育て

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

子育ての「当たり前」を疑ってみる

子どもが良いことをしたら、満面の笑みで「えらいね!」「すごい!」「いい子だね!」と褒める。 悪いことをしたら、「ダメでしょ!」「どうしてそんなことするの!」と真剣な顔で叱る。

これは、長らく子育ての「当たり前」として、多くの家庭で行われてきたことだと思います。 しかし、アドラー心理学では、この「褒めること」も「叱ること」も推奨しません。

「え、じゃあ一体どうすればいいの?」 きっと、そう思われたことでしょう。この挑発的とも思える提案の裏には、子どもの本当の自立を願う、深く温かい眼差しが隠されています。

「褒める」ことの思わぬ副作用

まず、「褒める」ことの副作用について考えてみましょう。 「褒める」という行為は、一見すると子どものやる気を引き出す最良の方法に思えます。しかし、そこにはいくつかの落とし穴が潜んでいます。

一つは、「褒められること」が行動の目的になってしまうこと。「褒めてくれるからやる」「褒めてくれないならやらない」という、他者評価に依存した子になってしまう危険性があります。

そして、もっと本質的な問題は、褒めるという行為が無意識のうちに「縦の関係」を作り出してしまうことです。「褒める」とは、能力のある人がない人にする「評価」です。親が評価者(上)で、子どもが被評価者(下)という構図が固定化されると、子どもはいつまでも親の顔色をうかがい、対等な個人として自立していくのが難しくなります。

「叱る」ことが、何も生まない理由

では、「叱る」についてはどうでしょうか。 これは言うまでもなく、恐怖による支配でしかありません。叱られた子どもは、自分の行動を心から反省するのではなく、「どうすれば親にバレないか」「どうすれば怒られずに済むか」ということに知恵を絞るようになります。あるいは、ただただ反発心を募らせるだけで、そこに建設的な学びは生まれません。

叱ることもまた、親が「上」の立場から子どもを一方的にコントロールしようとする、「縦の関係」の典型的なコミュニケーションなのです。

じゃあ、どうするの? その答えが「勇気づけ」

褒めるのでもなく、叱るのでもない。 では、どうすればいいのか。その問いに対するアドラー心理学の答えが「勇気づけ」です。

勇気づけとは、評価や支配とは全く違う次元の関わり方です。 それは、親と子が対等な「横の関係」に立ち、子どもが「自分には困難を乗り越える力がある」と、自らの力で思えるように援助することです。結果ではなくプロセスに注目し、成功しても失敗しても、その子の存在そのものにOKを出す。それが勇気づけの基本です。

今日からできる!具体的な「勇気づけ」の言葉

理屈はわかっても、実践は難しいもの。そこで、具体的な場面での「勇気づけ」の言葉かけをいくつかご紹介します。

【シーン1】子どもがお手伝いをしてくれた時

  • よくある対応(褒める):「えらいね!いい子だね!」
  • 勇気づけ:「ありがとう、すごく助かったよ!
    • ポイント:評価ではなく、感謝(Iメッセージ)を伝える。自分が人の役に立てたという「貢献感」が、子どもの勇気になります。

【シーン2】子どもがテストで良い点を取った時

  • よくある対応(褒める):「100点なんてすごい!頭がいいのね!」
  • 勇気づけ:「頑張って勉強していたもんね。その努力が、お母さんは嬉しいな
    • ポイント:結果ではなく、そこに至るプロセスや努力に注目する。

【シーン3】子どもが失敗して落ち込んでいる時

  • よくある対応(叱る):「だから言ったでしょ!」
  • 勇気づけ:「悔しいね。でも、挑戦したことが素晴らしいよ。次はどうしたらうまくいくか、一緒に考えてみようか?
    • ポイント:まずは気持ちに共感する。そして失敗を非難せず、次への一歩を考える仲間になる。

そして、究極の勇気づけは、特別なことがなくても伝えられる言葉です。 「あなたがいてくれるだけで、嬉しいよ」 この存在そのものへの喜びを伝える言葉が、子どもの心の根っこに「自分はここにいていいんだ」という、生涯にわたる安心感を育むのです。


頭ではわかっていても、長年の癖でつい褒めたり、カッとなって叱ってしまったりする。それは、親として当然のことです。私自身、4人の子育ての真っ最中で、日々試行錯誤の連続です。

もしあなたが、お子さんとの関わり方に悩み、「勇気づけ」の子育てを実践してみたいけれど、どうすればいいかわからないと感じていらっしゃるなら、一度お話しに来ませんか。 カウンセリングでは、親御さん自身の心の癖や、イライラの本当の「目的」を探りながら、具体的な言葉かけを一緒に練習していくことができます。まずはお父さん、お母さん自身が勇気づけられる、そんな時間にできればと思っています。


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