日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
甘えと勇気づけの違い。自立を促す本当のサポートとは?
困っている後輩の仕事、つい「やっとくよ!」と手伝いすぎてしまう。 落ち込んでいる友人の話を、「あなたは悪くないよ」とひたすら聞いてあげる。
良かれと思ってしている、そんなあなたの優しさ。でも、ふとした瞬間に「これって、本当に相手のためになっているのかな…?」「もしかして、ただ甘やかしているだけなんじゃないか」と、疑問に思ったことはありませんか。
「優しさ」と「甘やかし」の境界線が分からなくなる、その戸惑いの気持ち、とてもよく分かります。アドラー心理学には、この問題をスッキリと解き明かすための、明確な物差しがあります。それが「甘え」と「勇気づけ」の違いを理解することなのです。
それは「甘え」? 相手の課題を奪う“優しさ”
アドラー心理学でいう「甘え(甘やかし)」とは、とてもシンプルです。 それは、相手が自分で解決すべき課題を、あなたが肩代わりしてしまうこと。
ここで重要になるのが「課題の分離」という考え方です。ある問題が起きた時、「これは、最終的に誰が責任を負うべき課題なのか?」を見極める視点です。
例えば、後輩が仕事の締め切りに間に合わなさそうな時。あなたが代わりに資料を完成させてあげたとします。これは一見、優しいサポートに見えますが、後輩が「時間管理を学び、自分の力で仕事をやり遂げる」という、彼自身の課題を奪ってしまったことになります。
落ち込んでいる友人に「全部相手が悪いよ!」と全面的に同調するのも同じです。友人が「自分の感情や行動と向き合い、次のステップを考える」という大切な課題を、あなたが奪っているのかもしれません。
課題を奪ってしまう行為は、相手から「自力で解決する力」と「困難を乗り越える自信」を、長期的に奪ってしまいます。これは、優しさの仮面をかぶった「勇気くじき」とも言えるのです。
これが「勇気づけ」。自立を促す本当のサポート
では、本当の意味で相手のためになるサポート、「勇気づけ(encouragement)」とは何でしょうか。
それは、相手が自力で自分の課題を解決できるよう、困難に立ち向かう活力を与えること。課題を肩代わりするのではなく、相手が自分の足で立てるように、横からそっと支えるイメージです。
先ほどの例で考えてみましょう。
後輩が困っていたら、「大変そうだね。どこで一番困っている?」「もしよかったら、一緒に計画を立て直してみようか?」と、本人が解決するための援助を申し出る。 友人が落ち込んでいたら、「そうか、辛かったんだね」と気持ちに寄り添った上で、「これからどうしたい?」「簡単じゃないと思うけど、あなたなら乗り越えられると信じているよ」と、本人の力を信頼していることを伝える。
これが「勇気づけ」です。 勇気づけの基本は、相手との「横の関係」にあります。相手を自分より能力が低い「下」の存在と見ている(縦の関係)から、「助けて“あげる”」という発想になります。相手を対等な「仲間」だと尊敬している(横の関係)からこそ、「一緒に考えよう」「あなたを信じている」という、心からのサポートができるのです。
今日からできる「勇気づけ」の言葉
「勇気づけ」は、難しいことではありません。日々の言葉遣いを少しだけ意識することで、実践できます。
- 評価ではなく、感謝を伝える 「すごいね!(評価)」ではなく、「ありがとう、助かったよ!(感謝)」
- 結果ではなく、プロセスに注目する 「成功してよかったね」だけでなく、「大変だったのに、よく頑張ったね」
- 共感と信頼を伝える 「大丈夫、私がなんとかしてあげる」ではなく、「大変だと思うけど、あなたならできると信じているよ」
- 答えではなく、質問を投げかける 「こうすればいいよ」と指示するのではなく、「あなたはどう思う?」「どんな方法がありそうかな?」と問いかける。
「信じて、待つ」勇気
「甘え」と「勇気づけ」。この二つを分ける最大のポイントは、あなたが相手の可能性を、心の底から信じられるかどうかに尽きます。
つい相手の課題を奪ってしまうのは、もしかしたら心のどこかで「この人には、一人では無理だろう」と、相手の力を見くびっているからかもしれません。
本当の意味でのサポートとは、相手が失敗したり、回り道をしたりするのを見守る「待つ勇気」を持つこと。そして、相手が本当に助けを求めてきた時には、いつでも手を貸せる準備をしておくことです。
それは、相手のためだけではありません。相手を信じることができた時、あなた自身も「自分は仲間を信頼し、貢献できる存在だ」という感覚に満たされ、結果的に自分自身も勇気づけられるのです。
もし、あなたが周りの人との関わり方で悩んでいたり、本当の意味で相手を勇気づけたいと願っていたりするなら、ぜひ一度お話ししに来てください。あなたらしいサポートの形を、一緒に見つけていきましょう。
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お会いできるのを楽しみにしています。
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