思春期の子どもに、親ができるたった一つのこと – “信じて見守る”という勇気のタスク

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

我が家に「宇宙人」がやってきた日

昨日まで「お母さん、聞いて!」と学校での出来事を無邪気に話してくれた子が、急に「別に」「知らん」「ウザい」しか言わなくなる。 自分の部屋にこもり、ドアを固く閉ざして、中で何をしているのかさっぱりわからない。 親の言うことなすこと、まるで揚げ足を取るかのように、ことごとく反発してくる。

思春期の子どもを持つ多くの親御さんが、「まるで、知らない生き物、宇宙人が家に住み着いてしまったようだ」と感じると言います。 その態度の変化に、親として寂しさを感じ、将来への不安を覚え、時には苛立ち、そして「私の子育ては、どこかで間違ってしまったのだろうか…」と、自分を責めてしまうこともあるでしょう。

我が家にも中学二年生の長男がいますが、親子の会話が時々、取り調べのようになってしまうことがあります。「今日の給食は何だった?」「…忘れた」。何とも言えない、寂しい空気が流れる瞬間です。

それは「反抗」ではなく、「自立」への助走

親の頭を悩ませる、いわゆる「反抗期」
しかし、アドラー心理学では、その現象を全く違う視点から捉えます。

それは問題行動などではなく、子どもが親という安全な港から離れ、一人の人間として自立しようとする、極めて健全で、むしろ喜ぶべき“独立宣言”なのです。

子どもは、親とは違う「自分」という存在を確立しなければなりません。そのためには、一度、親の価値観を疑い、あえて反発し、親と心理的な距離を取るというプロセスが必要不可決なのです。 それは、親からすれば寂しい「反抗」かもしれませんが、子どもからすれば、自分の足で人生を歩き出すための「自立への助走」に他なりません。

この視点の転換こそが、親の心を少しだけ軽くしてくれる最初のステップです。

親が試される「課題の分離」という名の綱渡り

子どもが自立への助走を始めた時、親にはアドラー心理学における最も重要で、そして最も難しいタスクが突きつけられます。それが「課題の分離」です。

シンプルに言えば、「それは、誰の課題なのか?」を冷静に見極めることです。

  • 子どもの課題:勉強をするかしないか。どんな友達と付き合うか。どんな服装や髪型をするか。将来、どんな道に進むことを夢見るか。これらの選択の結果は、最終的に子ども自身が引き受けるべきものです。

  • 親の課題:子どもを一人の人間として尊敬し、その子の課題に土足で踏み込まないこと。心配のあまり先回りして口を出したり、親の価値観を押し付けたりしないこと。

これは、「放任」とは全く違います。むしろその逆で、子どもが道に迷い、本当に助けを必要とした時には、「いつでもここにいるよ」と、手を差し伸べる準備をしておく。この「介入」と「放任」の間にある、細い細い綱の上を渡っていくような、繊細なバランス感覚が親には求められるのです。

親ができる、たった一つのこと

では、具体的に親にできることは何でしょうか。 口うるさく管理することでも、子どもの言いなりになることでも、無関心に突き放すことでもありません。

思春期の子どもに対して親ができる、究極にして、たった一つのこと。 それは、**「子どもを信じて見守る」**ということです。

言葉にするのは簡単ですが、これほど難しいことはありません。子どもの未来を案ずるからこそ、失敗させたくないと思うからこそ、信じて待つのは苦しい。だからこそ、これは親にとっての「勇気のタスク」なのです。

「信じて見守る」とは、具体的には次のような関わり方です。

  • 言葉で伝える:「あなたの人生はあなたのものだよ。お父さん(お母さん)は、あなたがどんな道を選んだとしても、あなたの味方だからね」と、無条件の信頼を、照れずに言葉にして伝えます。

  • 態度で示す:子どもの部屋に入る前には、必ずドアをノックする。スマホを勝手に見たり、プライベートを詮索したりしない。これらの行動が、「私はあなたを一人の対等な人間として尊敬しています」という何よりのメッセージになります。

  • 安全な港でいる:子どもが外の世界の荒波に揉まれ、傷つき、失敗した時に、安心して帰ってこられる「安全基地」であり続けること。そこには、温かい食事と、「おかえり」という穏やかな眼差しがあれば十分です。

親がこの「信じる」という勇気を示し、どっしりとした港でいてくれる時、子どもは安心して自分の人生という大海原に、冒険の旅へと漕ぎ出していくことができるのです。


理屈ではわかっていても、可愛い我が子のこととなると、不安でつい口を出してしまう。信じたい気持ちと、心配でたまらない気持ちの間で、心が揺れ動く。それは親として、本当に自然な感情です。

もしあなたが、お子さんとの関わり方に悩み、信じて見守る勇気が欲しいと感じていらっしゃるなら、一度お話しに来ませんか。 カウンセリングでは、まず親御さん自身の不安な気持ちを整理し、安心感を取り戻すためのお手伝いをします。そして、お子さんとの間に健全な境界線を引く「課題の分離」を、具体的な場面でどう実践していくか、一緒に考えていきましょう。


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