あなたの”正しさ”は、誰かを幸せにしていますか?

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

「私は正しい、あなたが間違っている」という袋小路

夫婦喧嘩で、相手の矛盾を理路整然と突きつけ、ぐうの音も出ないほどに論破してしまう。 職場の会議で、自分の意見の正しさを証明するために、相手の意見の欠点を徹底的に攻撃する。 子どものためを思って、「こうするのが“正しい”のよ」と教え諭すが、子どもはふてくされて反発するばかり。

こうした場面で、私たちは「自分は正しいことをしているのだから、相手はそれを受け入れるべきだ」と、固く信じています。 しかし、なぜでしょう。その「正しさ」を証明すればするほど、相手は納得するどころか、さらに頑なになったり、関係が修復不可能なほど冷え切ってしまったりする。 「正しさ」で相手を打ち負かした後に残るのは、優越感ではなく、むしろ、どうしようもない断絶と孤独感ではないでしょうか。

その「正しさ」の主張、実は“権力争い”です

なぜ、正しいはずのあなたが、受け入れられないのか。 アドラー心理学は、その背景に、人間関係における「権力争い」という、非常に厄介なゲームが隠れていると指摘します。

対人関係のトラブルは、多くの場合、どちらの意見が論理的に「正しい」かを決めるためのディベートではありません。 それは、「この関係において、どちらが“上”で、どちらが主導権を握るか」を決めるための、無意識の“権力争い”なのです。

あなたが「正しさ」という名の剣を振りかざした時、相手が守ろうとしているのは、自分の間違った意見ではありません。守ろうとしているのは、「あなたに屈服させられることから、自分自身の“尊厳”を守ること」なのです。 だから、相手はどんなに理不尽な理屈を使っても、あるいは沈黙という鎧に閉じこもってでも、あなたに「負けない」ように抵抗します。

この権力争いのゲームに、勝者はいません。どちらかが勝ったように見えても、そこに残るのは傷ついた信頼関係だけであり、結局は敗者が二人生まれるだけなのです。

「正しさ」よりも、大切なもの

では、私たちは何を基準に物事を判断すればいいのでしょうか。 アドラー心理学のコンパスが指し示すのは、「正しいか、間違っているか」という基準ではありません。 それは、「この考え方、この関係性は、私たちにとって、より良く、より幸せなものだろうか」という、「共同体感覚」に基づいた基準です。

目の前の相手を、打ち負かすべき「敵」と見なすのか。 それとも、共に幸せを目指す「仲間」と見なすのか。

もしあなたが、相手を「仲間」だと考えるならば、答えは自ずと見えてくるはずです。 たとえ、あなたが100パーセント「正しい」と確信していたとしても、その正しさを振りかざすことで、大切な仲間を傷つけ、関係を損なうのであれば、その「正しさ」は、もはや“善”ではありません。 それは、二人にとって「不便」で「不適切」な選択なのです。

“権力争い”の土俵から、降りる勇気

この不毛な戦いから抜け出す方法は、ただ一つ。 相手が戦いを挑んできたとしても、あなたの方から、その土俵に乗らないことです。

相手が攻撃的な言葉であなたを非難してきた時、「売り言葉に買い言葉」で応戦しない。「あなたは、そう思うんですね」と、相手の意見を(同意はせずとも)一度は受け止める。そして、冷静にその場を離れる勇気を持つ。

そして、何よりも大切なのは、「私が正しい」という、その思い込み自体を手放すことです。 自分の意見は、数ある意見の中の一つに過ぎない。自分から見て正しいことが、相手の立場から見ても正しいとは限らない。その多様性を受け入れるのです。

「でも」「だって」「そうじゃなくて」といった、相手を否定する言葉を、一度、封印してみませんか。 代わりに、「なるほど、そういう考え方もあるんですね。それで、“私たちは”どうすれば、もっとうまくやっていけるでしょう?」と、主語を「私」から「私たち」に変え、協力のテーブルにつくことを提案するのです。

どちらが正しいかを証明するよりも、二人で一緒に幸せになる方法を探すこと。 そのために、時には自分の「正しさ」という名のプライドを、そっと横に置く。 その成熟した勇気こそが、人間関係における、本当の“強さ”なのかもしれません。


長年、「自分が正しい」と信じて生きてきた人にとって、その考えを手放すのは、自分を否定されるようで難しいことかもしれません。権力争いを仕掛けられた時、冷静に対応できず、ついカッとなってしまうこともあるでしょう。

もしあなたが、その不毛な争いのパターンから抜け出し、大切な人との間に温かい関係を築きたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。 カウンセリングでは、あなたがなぜ「正しさ」にこだわってしまうのか、そのライフスタイルを探求し、あなたが無意識のうちに仕掛けている(あるいは、乗ってしまっている)「権力争い」のパターンに気づくお手伝いをします。そして、勝ち負けではない、「協力」に基づいた人間関係を築くための具体的な方法を、一緒に練習していきましょう。


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