日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです！ 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
「なんで、この熱意が伝わらないんだ！」という空回り
仕事で落ち込んでいる後輩に、「気合が足りない！もっと情熱を持て！俺の若い頃はな…」と、自分の成功体験を熱く語ってしまう。 悩んでいる友人に、「そんなことでクヨクヨするな！お前なら絶対にできる！とにかく行動あるのみだ！」と、力強く背中を叩きすぎる。
こちらは、100％の善意で、相手を「勇気づけよう」としているつもり。 しかし、なぜでしょう。こちらの熱意とは裏腹に、相手の目はどんどん生気を失い、引きつった笑顔で、ただ黙り込んでしまう。 そして、その場には、気まずい空気と、こちらの熱意だけが空回りした、虚しい感覚だけが残る。 この、悲しいほどの“温度差”に、あなたも心当たりはありませんか。
その“励まし”、相手の課題への「土足での介入」です
なぜ、あなたの純粋な熱意は、相手に届かないのでしょうか。 それは、あなたの熱血な励ましが、「課題の分離」ができていない、典型的な例だからです。
落ち込んだり、悩んだりしている、その困難な状況と、自分自身の力で向き合うこと。これは、「相手の課題」です。 あなたが、そこに「もっと頑張れ！」「クヨクヨするな！」と、あなたの価値観や正論を叩きつけるのは、相手の心の中に土足で踏み込み、「お前は、今すぐ俺の言う通りに感じ、行動すべきだ」と、相手の課題を乗っ取ろうとする行為なのです。
人は、自分の感情や行動を、他人からコントロールされることを、本能的に嫌います。だから、あなたの熱意が強ければ強いほど、相手は心を閉ざし、あなたの言葉に抵抗するのです。
「縦の関係」の励ましは、ただの“勇気くじき”
さらに、その熱血な励ましは、無意識のうちに「縦の関係」を作り出してしまっています。
「お前ならできる！」という言葉の裏には、「（まだできていないお前に、すでにできている俺が、上から言ってやる）」という、無意識の優越感が隠れています。 「俺の若い頃は…」という武勇伝は、相手に「それに比べて、自分は…」という、劣等感を植え付けかねません。
良かれと思ってのあなたの励ましが、結果的に相手に「自分は、この人のように強くない、ダメな人間だ」と感じさせてしまう。それは、アドラー心理学でいう、最悪の「勇気くじき」になっているのです。
本当の「勇気づけ」は、静かで、対等な場所からやってくる
では、どうすればいいのでしょうか。熱血な説教ではなく、本当の意味での「勇気づけ」とは、一体どのようなものなのでしょうか。
ステップ１：まず、黙って、隣に座る 相手を変えよう、元気づけようとする、その前のめりな姿勢を、まず手放しましょう。そして、ただ、相手の隣に静かに座り、同じ方向を見る。評価も、アドバイスもせず、ただそこにいる。これが、対等な「横の関係」の始まりです。
ステップ２：「どうしたの？」ではなく、「何かあった？」と、扉を開けて待つ 相手を尋問するような聞き方ではなく、相手が自ら話し始めるのを、辛抱強く待ちます。そして、相手が話し始めたら、その言葉を遮らず、ただ、その感情に寄り添い、共感するのです。「そうか、それは辛かったね」「大変だったんだね」と。
ステップ３：相手の力を、心から信じていると伝える 「あなたならできる！」という無責任な断定ではなく、「私は、あなたには、この問題をあなた自身の力で乗り越える力があると信じているよ」と、「信頼」を伝えます。そして、「もし、何か私にできることがあったら、いつでも声をかけてほしい。一緒に考えよう」と、「協力」の意思を示すのです。
本当の勇気づけとは、相手を上からグイグイと引っ張り上げることではありません。 それは、相手の横に座り、その人が自分の足で再び立ち上がるのを、静かに、しかし絶対的な信頼をもって見守ること。
熱血な言葉は、相手の耳を塞がせてしまいます。 しかし、静かな信頼は、相手の心に直接届き、その内側から、再び歩き出すための勇気を、ゆっくりと、しかし、確かに湧き上がらせるのです。
良かれと思ってやったことが、いつも裏目に出てしまう。どうすれば、相手を本当に勇気づけられるのか、その具体的な方法が知りたい。そんな風に悩んでいらっしゃるかもしれません。
カウンセリングでは、あなたがなぜ「熱血な説教」をしてしまうのか、その背景にあるあなたのライフスタイルを探求します。そして、「縦の関係」のコミュニケーションから、「横の関係」の勇気づけへと、あなたの関わり方をシフトさせていくための、具体的な練習の場を提供します。
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お会いできるのを楽しみにしています。
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