アドラー心理学とは
アドラー心理学は、アルフレッド・アドラー(1870-1937)が創始した心理学で、現代の様々な心理学や自己啓発、コミュニケーション術の源流とも言われています。
その中心には、「私たちの悩みは、すべて対人関係に由来する」という考え方があります。
過去の「原因」を探すのではなく、これからの「目的」に目を向けることで、人はいつでも自分を変え、幸せになることができる。
アドラー心理学は、そんな「勇気づけ」に満ちた、希望の心理学です。
アドラー心理学を支える「5つの基本前提」
アドラー心理学の理論は、以下の5つの基本的な考え方(基本前提)の柱で支えられています。
1.個人の主体性
「私の人生は、私が決める」
自分の人生は環境や過去の出来事によって決定されるのではなく、自分自身の選択によって決めることができる、という考え方です。
私たちが経験する感情や思考、身体的な症状でさえも、何らかの目的を達成するために「自分が作り出し、使っている」と捉えます。
過去が現在を「決定」するのではなく、最終的にどう行動するかは「今の自分」に決定権があるのです。
2.目的論
「すべての行動には目的がある」
人間の思考、感情、行動には、対人関係における何らかの目的があるという考え方です。
例えば、「会社に行きたくない」という目的を達成するために、無意識に「うつ病を作り出す」といった見方をします。
過去の「原因」ではなく、未来の「目的」に焦点を当てることで、人生を変える力を自分自身が持っているという希望を見出します。
3.全体論
「自分の中に矛盾はない」
人間を、心と体、理性と感情のように分割できない一つの「全体」として捉える考え方です。
例えば「お酒をやめたいけど、やめられない」という葛藤は、心の中にあるのではなく、人と人との間に存在すると考えます。
その人の行動全体は、結局一つの目的に向かって協力しあっているのです。
4.社会統合論
「すべての悩みは対人関係の中にある」
人間は社会的な文脈に組み込まれた存在であり、孤立して生きているわけではありません。
私たちの行動は常に相手に影響し、相手の行動もまた私たちに影響を与えます。
すべての悩みの先には「人」がいる、というのがこの考え方の重要なポイントです。
5.仮想論
「人は自分だけが見える”メガネ”を通して世界を見ている」
これは、人は客観的な事実そのものではなく、自分自身の主観的な「意味づけ」を通して世界を見ている、という考え方です。
そして、その意味づけは「便利か・不便か」という基準で、いつでも自分で選び直すことができます。
この「かのように」という視点を持つことで、世界の捉え方が多様になり、自分で決断できるようになるのです。