日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
西の心理学者と、東の禅僧。奇妙な出会い
100年前のウィーンで、人間の「勇気」と「共同体」を説いた心理学者、アルフレッド・アドラー。 それより遥か昔、東洋で、世界の「無常」と「静寂」を説いた、禅の僧侶たち。
一見、全く交わることのなさそうな、この二つの知恵。 しかし、その根底には、驚くほどよく似た、一つの力強いメッセージが流れているとしたら、あなたはどう思いますか。
私たちは、常に、過去への後悔(「なぜ、あんなことを…」)と、未来への不安(「もし、~になったら…」)の間を、振り子のように揺れ動き、「今、この瞬間」という、人生で最も大切な場所に、ほとんど滞在することができていません。 この、心のさすらいから、私たちを救い出してくれるのが、アドラーと禅、二つの知恵に共通する、ある視点なのです。
共通点1:「過去も未来も、存在しない」という真実
アドラー心理学は、「原因論」を厳しく否定します。過去のトラウマや出来事が、今のあなたを“決定”しているわけではない、と。人生とは、過去から未来へと続く一本の「線」ではなく、「今、ここ」という、無数の「点」の連続であると考えます。私たちは、過去に縛られず、いつでも、この瞬間から、新しい一歩を踏み出すことができるのです。
一方、禅には、「前後際断(ぜんごさいだん)」という言葉があります。 過去はすでに去り、未来はまだ来ていない。執着すべき過去も、思い煩うべき未来もなく、ただ、この一瞬があるのみ。過去への後悔と、未来への取り越し苦労を、きっぱりと断ち切ることを説きます。
両者は、全く違う言葉を使いながら、「今、ここ」という瞬間の、絶対的な重要性を、私たちに示しているのです。
共通点2:「“私”という、厄介な主人公」からの解放
私たちの悩みの多くは、どこから来るのでしょうか。 アドラー心理学は、その原因を、過剰な「自己への関心」にあると考えます。「自分が、周りからどう見られるか」「自分が、いかに認められるか」。この、「私」という小さな牢獄に囚われている時、私たちは苦しみます。そして、その解決策として、関心のベクトルを外に向け、「他者への関心(共同体感覚)」を持ち、仲間に貢献することで、人は本当の幸福を得られる、と説きます。
一方、禅は、「無我」の思想を説きます。 苦しみの根源は、「私が、私が」という、固定的な自我(エゴ)への執着にある、と。坐禅などを通して、この「私」という感覚を一度手放し、世界と一体になることで、本当の安らぎ(涅槃寂静)が得られると教えます。
これもまた、驚くべき一致です。両者とも、「自己への執着」こそが苦しみの源泉であり、そこから解放されることに、真の自由と幸福がある、と考えているのです。
“今、ここ”に、深く根を下ろすためのヒント
では、具体的にどうすれば、この「今、ここ」を生きる感覚を、日常に取り戻せるのでしょうか。
- ヒント1(禅的アプローチ):ただ、一つの行為に“成りきる” コーヒーを飲む時は、スマホを見ながらではなく、その香り、温かさ、苦味、その一杯に、全身全霊で集中する。歩く時は、考えごとをするのではなく、足の裏が地面に触れる感覚、風が肌をなでる感覚に、ただ気づき続ける。行為と、自分が一体になるのです。
- ヒント2(アドラー的アプローチ):目の前の“あなた”に、貢献する 自分の内側ばかりに向いている意識を、目の前の他者に向けてみましょう。「この人の役に立つために、今、自分にできることは何か?」と問い、具体的な**「貢献」**という行動に移すのです。家族の話を、評価もアドバイスもせず、ただ真剣に聴く。同僚の仕事を、ほんの少し手伝う。その行動が、あなたを「今、ここ」の対人関係へと、力強く引き戻してくれます。
これら二つのアプローチは、一見違うように見えて、「自己への関心を、手放す」という点で、深く繋がっています。
100年前のウィーンの心理学者も、遥か昔の東洋の禅僧も、私たちに同じことを伝えているのかもしれません。 幸福は、過ぎ去った過去にも、まだ来ぬ未来にも、そして、あなたの頭の中の、ぐるぐる回る思考の中にさえもない。それは、ただ、「今、ここ」での、あなたと世界との、誠実で、丁寧な関わりの中にだけ、見出されるのだ、と。
頭ではわかっていても、つい過去や未来のことで、頭がいっぱいになってしまう。「今、ここ」に集中する方法が、具体的にわからない。そのお気持ち、よくわかります。
カウンセリングは、あなたを過去や未来に縛り付けている、不便なライフスタイルを安全な空間で探求し、その思い込みから自由になるお手伝いをする場所です。そして、「今、ここ」を豊かに生きるための、具体的な心のトレーニングを、伴走者としてサポートさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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