「多様性」を尊重するとは、自分と違う意見に“不快”になる勇気を持つこと。

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

「みんな違って、みんないい」の、その先へ

「多様性を、尊重しましょう」 「いろんな意見があって、いいよね」 私たちは、頭では、そう理解しています。それは、現代社会における、一つの美しい「正解」であるかのように語られます。

しかし、実際に、自分の信条と全く違う意見を目の当たりにした時、あなたの心の中は、どうでしょうか。 SNSで、自分の価値観とは相容れない投稿を見て、強い嫌悪感を抱いたり、怒りを覚えたりする。 会議で、自分の提案が根本から覆されるような反対意見が出て、冷静でいられなくなる。 心の中に、ざわざわとした不快感が広がるのを感じる。

この、「理屈(タテマエ)」と「感情(ホンネ)」のギャップに、多くの人が、一人で静かに苦しんでいます。 「多様性を尊重する」とは、ただ「いろんな人がいるね」と無関心に眺めることなのでしょうか。それとも、自分の不快な感情に蓋をして、無理に「いいね!」と笑顔を作ることなのでしょうか。

なぜ、私たちは「違う意見」に不快になるのか?

そもそも、なぜ、自分と違う意見は、これほどまでに私たちの心を乱すのでしょうか。 それは、私たちが自分の「私的論理(プライベート・ロジック)」、つまり「自分だけの当たり前や正しさ」を、世界の普遍的な真実だと、無意識のうちに信じ込んでいるからです。

自分と違う意見は、その「自分の世界の安全性」を脅かす、危険な“異物”として認識されます。 だから、私たちは不快になり、その異物を排除しようと、相手を論破したり、見下したり、あるいは距離を置いたりして、自分の心の平穏を守ろうとするのです。それは、ごく自然な防衛反応と言えるでしょう。

アドラーが語る、本当の「共同体感覚」

しかし、アドラー心理学が目指す「共同体感覚」とは、全員が同じ考えを持つ、均質で、波風の立たない集団のことでは、断じてありません。

本当の共同体感覚とは、一人ひとりの「違い」を、そのまま認め、尊重し合った上で、それでもなお、「私たちは、協力できる仲間だ」と信じられる感覚のことです。 むしろ、多様な視点や、異なる意見の“衝突”こそが、共同体をより良く、より創造的に発展させるための、不可欠なエネルギーだと考えます。全員が「いいね!」と言う世界は、心地よいかもしれませんが、そこからは、新しいものは何も生まれないのです。

“不快”になる勇気を持つための、心のトレーニング

では、どうすれば、違う意見に直面した時の「不快感」を乗り越え、それを共同体の力に変えることができるのでしょうか。

ステップ1:まず、「不快な自分」を、そのまま受け入れる(自己受容) 違う意見にイラっとしたり、モヤっとしたりする自分を、「心が狭い」と責めるのをやめましょう。「ああ、自分は今、自分の価値観が脅かされたと感じて、不快になっているんだな」と、その感情を、良い悪いで判断せず、事実として認めるのです。

ステップ2:「課題の分離」で、相手と自分を切り離す 相手がどんな意見を持つかは「相手の課題」です。その意見に対して、あなたがどう反応するかは「あなたの課題」です。相手の意見は、あなたの人格そのものを攻撃しているわけではありません。

ステップ3:「なぜ、この人はこう考えるのだろう?」と、相手の“世界地図”に関心を持つ 相手を「敵」や「間違っている人」と見るのではなく、「自分とは違う地図を持っている、興味深い旅人」として、純粋な好奇心を向けてみましょう。その意見の背景にある、相手の経験や価値観(ライフスタイル)を、想像してみるのです。

ステップ4:「でも」ではなく、「なるほど、そして」で対話を続ける 相手の意見を否定するのではなく、「なるほど、あなたは、そういう視点から見ているのですね。とても興味深いです。そして、私としては、こういう見方もできるかと思うのですが、どうでしょうか?」と、対立ではなく、協力を前提とした対話を試みましょう。

真の「多様性の尊重」とは、不快な感情をなくすことではありません。 それは、自分と違う意見に触れた時に生じる、その「不快感」や「心の揺らぎ」から逃げずに、そこに留まる“勇気”を持つことです。 そして、その緊張感の中から、新しい理解や、より良い協力関係を創り出していく、知的で、創造的な営み、それこそが、私たちが目指すべき、成熟した社会の姿なのです。


どうしても、自分と違う意見を持つ人を、敵だと見なしてしまう。意見の対立が怖くて、本音で人と関わることができない。そんな風に悩んでいらっしゃるかもしれません。

カウンセリングは、あなたがなぜ他者の「違い」に不快感を覚えるのか、その背景にあるあなたの「私的論理」を安全な空間で探求する場所です。そして、対立を恐れず、多様な人々と協力し、豊かな人間関係を築いていくための「勇気」と「技術」を、一緒に育んでいくお手伝いをさせていただきます。

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