日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです！ 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
スポットライトの中心で、足がすくむ
会議で、自分の名前が呼ばれた瞬間に、心臓が口から飛び出しそうになる。 プレゼンテーションの前夜は、緊張でよく眠れない。当日は、手足が震え、声が上ずってしまう。 大勢の自己紹介の場面では、自分の番が近づくにつれて、頭の中が真っ白になっていく。 そして、終わった後も、「あの時の言い方、おかしかったかな…」「みんな、心の中では笑っていたんじゃないか…」と、何日も一人反省会を繰り返す。
人前で話すことへの、この強烈な恐怖。 それは、大勢の視線というスポットライトを浴びた時、「完璧な自分でなければならない」「失敗してはいけない」という、過剰なプレッシャーに、心が押しつぶされそうになっている状態なのです。
なぜ、あなたはそこまで“うまく話す”ことにこだわるのか？
では、なぜ私たちは、これほどまでに「うまく話すこと」に、こだわってしまうのでしょうか。 アドラー心理学の視点から見ると、その理由は、あなたのスピーチの「目的」が、いつの間にか、すり替わってしまっているからです。
あなたが本当に恐れているのは、話すことそのものではありません。 あなたが恐れているのは、「うまく話せない自分」を、他者に見られ、評価され、そして「価値のない人間だ」と判断されてしまうことなのです。
つまり、スピーチの目的が、「聞き手に、何か有益なことを伝える」ということではなく、「自分が、聞き手からどう見られるか」という、強烈な「自己への関心」に、完全に支配されてしまっている状態です。 「うまく話して、すごいと思われたい」 「賢いと思われたい」 「認められたい」 この、承認欲求こそが、あなたに過剰なプレッシャーを与え、パフォーマンスを低下させる、最大の原因なのです。
たった一つの心構え – あなたは“貢献”するために、そこにいる
この恐怖の呪縛から、あなたを解き放つ、たった一つの、しかし、最もパワフルな心構えがあります。 それは、意識のベクトルを、180度、転換することです。
「自分がどう見られるか（自己への関心）」から、「自分は、聞き手に何を与えられるか（他者への関心）」へと、スピーチの目的を、完全に切り替えるのです。
あなたは、あなたの能力を、聞き手から評価されるために、そこに立っているのではありません。 あなたは、あなたの持っている情報や知識、経験を通して、聞き手という仲間たちに“貢献”するために、そこに立っているのです。
この視点に立った瞬間、魔法がかかったように、世界は変わって見えます。 目の前にいる聞き手は、あなたを採点する、冷たい「敵」や「審査員」ではなく、あなたが貢献すべき、温かい「仲間」に変わるのです。
「貢献」の視点を持つと、すべてが変わる
この心構えを持つと、具体的に何が変わるのでしょうか。
- 準備の仕方が変わる 「どうすれば、かっこよく、流暢に話せるか」ではなく、「どうすれば、この聞き手にとって、一番分かりやすく、役に立つ内容を届けられるか」を、真剣に考えるようになります。準備の焦点が、聞き手中心になるのです。
- 緊張の意味が変わる ドキドキする緊張は、「失敗への恐怖」ではなく、「聞き手である仲間に、ちゃんと貢献したい」という、あなたの誠実さや責任感の表れだと、捉え直すことができます。適度な緊張は、むしろ最高のパフォーマンスを引き出す、あなたの味方になります。
- 失敗の捉え方が変わる もし、途中で言葉に詰まったり、噛んでしまったりしても、「ああ、恥ずかしい」とは思いません。「申し訳ない、聞きづらかったですね。もう一度、言い直します」と、あくまで聞き手への貢献という目的に立ち返り、冷静に軌道修正ができるのです。不完全な自分を、恐れる必要がなくなります。
うまく話す必要など、全くないのです。 流暢である必要も、面白いことを言う必要もありません。 ただ、ひたすらに、「どうすれば、目の前の仲間たちの役に立てるだろうか」ということだけを考える。
「私は、この人たちのために、ここにいる」 そう心から思えた時、あなたの恐怖は、仲間への貢献という、温かく、そして力強いエネルギーへと、姿を変えているはずです。
頭ではわかっていても、人前に立つと、どうしても「どう見られているか」という自己への関心から抜け出せない。過去の失敗体験がトラウマのようになって、体が震えてしまう。そんな方もいらっしゃるでしょう。
カウンセリングでは、あなたがなぜそれほどまでに他者の評価を恐れてしまうのか、その根深いライフスタイルを安全な空間で一緒に探求します。そして、「自己への関心」から「他者への関心」へと、心のベクトルを切り替えるための具体的なトレーニングを、伴走者としてサポートさせていただきます。
初回カウンセリング（オンライン）はこちらからお申し込みいただけます。
お会いできるのを楽しみにしています。
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