アドバイスを求めておきながら、結局いつも自分のやり方を変えられない

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

「相談」という名の、お決まりの儀式

職場の先輩に、「仕事の進め方で、少し悩んでまして…」と、熱心に相談を持ちかける。先輩は、自分の時間を割いて、親身にアドバイスをくれる。その場では「なるほど!勉強になります!ぜひ、やってみます!」と、深く頷いて感謝を述べる。 しかし、翌日。あなたは、すっかり元の、慣れ親しんだ自分のやり方に戻っている。

友人との電話で、「彼との関係、どうしたらいいと思う?」と、何時間も悩みを打ち明ける。友人は、真剣に耳を傾け、様々な提案をしてくれる。でも、あなたは結局、いつもと同じパターンを繰り返してしまう。

そして、心の中で、こうつぶやくのです。 「アドバイスは、本当にありがたいんだけど、でも、やっぱり…」と。 この、「相談する→納得したふりをする→でも、やらない」という無限ループ。その結果、相手への申し訳なさと、変われない自分への自己嫌悪だけが、心に残る。あなたにも、そんな経験はありませんか。

その「相談」、本当に“答え”が欲しいですか?

なぜ、私たちは、せっかくもらったアドバイスを、活かすことができないのでしょうか。 アドラー心理学の「目的論」の視点から見ると、その答えは、非常にシンプルかもしれません。 あなたは、そもそも「解決策を求めて、行動を変えるため」に、相談しているのではないのです。

では、その「相談」という行為には、一体、どんな“目的”が隠されているのでしょうか。

  • 目的1:「変わらない自分」への、免罪符を手に入れるため 「人に相談までしたけれど、それでもダメだった」という事実を作ることで、「自分は、やるだけのことはやった」と、行動しない自分を正当化することができます。「私なりに努力はした」という、免罪符を手に入れるための、無意識の儀式なのです。
  • 目的2:ただ、話を聞いて、共感してほしいだけ 本当は、答えが欲しいわけではない。ただ、「大変だね」「頑張っているね」と、自分の今の状況や気持ちを承認してほしい。同情や注目を得ることで、一時的な安心感を得たいのです。
  • 目的3:最終的な「責任」を、誰かに押し付けたい もし、相手のアドバイス通りにやって失敗したら、「あの人が言った通りにしたのに…」と、責任を転嫁できます。自分で決断する責任を、無意識のうちに相手に委ねようとしているのです。

あなたの“正しさ”を守るための、頑固なライフスタイル

そして、もう一つ。アドバイスを受け入れられない、より根深い理由があります。 それは、あなたの「ライフスタイル(人生の設計図)」が、変化を強く拒んでいるからです。

私たちは、たとえ不便を感じていたとしても、心のどこかで「自分のやり方が一番だ」「自分は正しい」と信じています。 他人のアドバイスを素直に受け入れることは、「これまでの自分のやり方は、間違っていました」と、自分の人生のあり方そのものを、部分的に否定することのように感じられ、強い抵抗を覚えてしまうのです。 「自分のやり方を変えない」という頑固さは、これまでの自分を守るための、必死の自己防衛なのかもしれません。

「相談ごっこ」をやめて、本当の“協力”を始める

では、どうすればこの不毛なループから抜け出し、本当に前に進むことができるのでしょうか。

ステップ1:「相談の目的」を、自分ではっきりさせる まず、誰かに話す前に、「私は今、この人に何を求めているのだろう?」と、自分に問いかけてみましょう。「具体的な解決策?」「ただの共感?」「それとも、行動しないための言い訳探し?」。自分の目的を自覚するだけで、コミュニケーションの質は大きく変わります。

ステップ2:アドバイスを「命令」ではなく、「選択肢の一つ」として受け取る 相手のアドバイスを、「こうすべきだ」という命令として聞くから、反発したくなります。そうではなく、「なるほど、そういうやり方もあるのか」と、数ある選択肢の一つとして、対等な立場で受け止めるのです。最終的に、どのカードを切るかを決めるのは、100%あなた自身です。

ステップ3:「相談」から、「協力の依頼」へ もし本気で変わりたいと願うなら、漠然とした相談ではなく、具体的な「協力」を依頼してみましょう。 「〇〇という方法を試してみようと思うので、もし私が元のやり方に戻っていたら、遠慮なく指摘してもらえませんか?」というように。 相手を「評論家」ではなく、一緒に課題に取り組む「仲間」として巻き込むのです。これこそが、アドラー心理学の言う、本当の「勇気づけ」の実践です。

「相談ごっこ」は、あなたをその場に留まらせる、停滞のコミュニケーション。 「協力の依頼」は、あなたを未来へと進ませる、勇気のコミュニケーション。

あなたは、自分の人生の脚本を、いつまでも同じシーンの繰り返しにしますか? それとも、新しい登場人物(仲間の力)を借りて、次のページへと進みますか?


自分の「相談する目的」が何なのか、自分でもよくわからない。わかっていても、どうしても自分のやり方を変えることに、強い抵抗を感じてしまう。そんな方もいらっしゃるでしょう。

カウンセリングでは、あなたがなぜ変化を恐れるのか、その根深いライフスタイルを安全な空間で一緒に探求します。そして、「相談ごっこ」のパターンから抜け出し、他者と本当に「協力」しながら、ご自身の課題を解決していくための具体的な練習を、伴走者としてサポートさせていただきます。


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