Q. 褒められても「お世辞に決まってる」と素直に受け取れません。なぜでしょうか?

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

Q. 褒められても「お世辞に決まってる」と素直に受け取れません。なぜでしょうか?

ご質問ありがとうございます。これは、謙虚さが美徳とされる文化で育った私たちにとって、非常に「あるある」な悩みかもしれませんね。

上司から「君の企画書、すごく分かりやすかったよ」。 友人から「今日の服装、とても素敵だね」。

そんな言葉をかけられた時、嬉しいはずなのに、顔がカッと熱くなって「いえいえ、とんでもないです!」「そんなことないですよ」と、全力で否定してしまう。相手の言葉を素直に受け取れず、むしろ居心地の悪さを感じてしまう…。

その心のザワつきの正体は、一体何なのでしょうか。

なぜ、褒め言葉を素直に受け取れないのか?

アドラー心理学の視点から見ると、その背景にはいくつかの心理的な理由が考えられます。

最も根本的な理由は、あなた自身が「私には褒められるほどの価値がない」と、心のどこかで固く決めているからです。

私たちは皆、自分や世界について「こういうものだ」という独自の信念(ライフスタイル)を持っています。もし、あなたのライフスタイルが「私は大した人間ではない」という前提に基づいていたとしたら、他人からの褒め言葉という「事実」は、その信念と矛盾します。すると、心は混乱し、事実の方を「これはお世辞だ」「何かの間違いだ」と捻じ曲げて、いつもの自分像を守ろうとするのです。

また、「次も期待されたらどうしよう」という未来への不安も隠れています。 褒め言葉を一度受け取ってしまうと、次回も同じかそれ以上のパフォーマンスをしなければならない、というプレッシャーを感じてしまうのです。「期待に応えられずにガッカリされるくらいなら、初めから評価されない方が楽だ」と、無意識のうちに自分を守るために、相手の好意をブロックしてしまいます。

「褒める」の先にある「勇気づけ」の視点

アドラー心理学では、人を評価する「褒める」という行為と、困難に立ち向かう活力を与える**「勇気づけ」**を区別して考えます。

「すごいね」「優秀だね」という言葉は、能力や結果に対する評価であり、「できるあなた」だけを認める条件付きの肯定です。これは「縦の関係」に基づいています。

一方で「ありがとう、助かったよ」「あなたがいてくれて心強い」といった言葉は、あなたの存在や協力そのものへの感謝です。これは「横の関係」に基づく「勇気づけ」であり、私たちの自己価値感を育んでくれます。

もしあなたが誰かに褒められた時、それを「評価」としてではなく「勇気づけ」として受け取り直してみてはいかがでしょうか。 例えば、「資料が分かりやすいね」と言われたら、「(私の能力が評価された)」ではなく、「(私の作った資料が、この人の役に立ったんだな)」と、自分の「貢献」として捉え直すのです。そうすれば、プレッシャーではなく、純粋な喜びとして受け取りやすくなります。

素直に受け取るための小さな練習

そうは言っても、長年の癖はすぐには変わりません。今日からできる、小さな練習を始めてみましょう。

  1. 「否定」の代わりに「感謝」を口にする 「いえいえ、そんな…」という言葉が出そうになったら、ぐっとこらえて、ただ一言「ありがとうございます」と返してみましょう。最初はぎこちなくても構いません。言葉が意識を変えるきっかけになります。
  2. 褒められた「事実」だけを受け取る 「上司に『分かりやすい』と言われた(事実)」と「それはお世辞に違いない(自分の解釈)」を、頭の中で切り離します。解釈は一旦脇に置いておき、まずは「事実」だけを「そうか、そう言ってもらえたんだな」と静かに受け止めてみてください。
  3. 自分から相手を「勇気づけ」してみる 「〇〇さん、先日はありがとうございました」「その視点、参考になります」。自分から他者の役に立つこと(貢献)を始めると、「自分も誰かの役に立てる価値ある存在だ」という感覚(貢献感)が育ちます。この感覚が、自分への信頼につながっていきます。

褒め言葉を素直に受け取れないのは、あなたの性格が悪いからでは決してありません。ただ、自分自身の価値を信じる勇気が、ほんの少しだけ不足しているだけなのです。

他者からの評価を待つのではなく、まずあなたが、あなた自身に「OK」を出すこと。 「ありがとうございます」と微笑んで相手の好意を受け取れた時、あなたは他者の評価から一歩自由になり、本当の自信への扉を開いているはずです。


自分自身の価値を信じることは、一人では難しい道のりかもしれません。もし、自分を縛る「思い込み」の正体を知り、そこから自由になりたいと感じたら、ぜひ一度お話ししに来てください。


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