日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
モノで溢れた部屋と、停滞した心
「いつか使うかもしれない」と思って、何年も着ていない服が、クローゼットを占領している。 昔の恋人からもらったプレゼントや手紙を、見るたびに胸が痛むのに、どうしても捨てられない。 高かったから、という理由だけで、全く使っていない健康器具が、部屋の隅でホコリをかぶっている。
モノで溢れかえった部屋は、単に物理的なスペースを圧迫するだけではありません。それは、私たちの心のエネルギーを奪い、新しい一歩を踏み出すのを妨げ、人生そのものを停滞させてしまう、重たい“足かせ”にもなっているのです。 「片付けなければ」と頭ではわかっているのに、なぜ、私たちはモノを手放すことが、こんなにも難しいのでしょうか。
あなたが捨てられないのは、本当に“モノ”ですか?
アドラー心理学の視点から見ると、私たちが捨てられないのは、モノそのものではありません。 私たちが執着しているのは、そのモノに投影された、過去の記憶や感情、そして、満たされなかった未来への願望なのです。
一つひとつのモノを、あなたの心の“象徴”として、見つめ直してみましょう。
- 着ていない服 それは、「いつか痩せたら着よう」という、達成できなかった過去の目標や、「これを着て、素敵な場所へ行くはずだった」という、叶わなかった未来への未練の象徴かもしれません。
- 昔の恋人からのプレゼント それは、楽しかった頃の思い出そのものであり、「あの頃の自分は、愛される価値があった」という、過去の栄光への執着の表れかもしれません。それを手放すことは、過去の自分を否定するようで、怖いのです。
- 高かったけれど使っていないモノ それは、「これを買うという判断をした、過去の自分は間違っていなかった」と思いたい、自分の過ちを認めたくない気持ちの象徴かもしれません。
このように、片付けられないモノたちは、あなたの過去への後悔や、未来への不安、そしてありのままの自分を受け入れられない心を、静かに映し出しているのです。
「今」を生きるための、心の“断捨離”
では、どうすれば、この過去への執着という名の鎖を断ち切り、軽やかに未来へと進むことができるのでしょうか。 その鍵は、「課題の分離」と「目的論」にあります。
ステップ1:モノの“課題”と、心の“課題”を分離する まず、目の前にあるモノの「物理的な役割」と、あなたがそれに与えている「感情的な意味づけ」を、はっきりと分けましょう。 その服は、客観的に見て、「今のあなた」を輝かせてくれる服ですか? そのプレゼントは、「今のあなた」の生活に、喜びをもたらしていますか? 答えが「NO」であるならば、そのモノの物理的な役割は、すでに終わっているのです。
ステップ2:そのモノを持ち続ける“目的”に気づく 次に、「では、なぜ自分は、役割の終わったこのモノを、持ち続けているのだろう?」と、自分の心に問いかけてみましょう。 「これを持ち続けることで、自分は何から目をそらそうとしているのか?」「何を言い訳にしているのか?」 その「持ち続ける目的」に気づくことが、手放すための、最も重要なステップです。
ステップ3:「今、ここ」を主語にして、決断する 過去の自分がどうだったか、未来の自分がどうなるかは、一旦、横に置きましょう。 決断の基準は、ただ一つ。「“今の私が”、これからの人生を、より快適に、より幸せに生きるために、このモノは必要か?」 その問いに、誠実に答えるのです。
手放すことは、過去の自分を否定することではありません。 それは、過去の経験に感謝しつつも、「私は、もう過去には生きない。これからは、“今”を生きるのだ」という、未来への力強い“決断”なのです。
部屋が片付くと、不思議と心も軽やかになります。 それは、物理的な空間が広がるからだけではありません。過去への執着を手放し、新しいものが入ってくるための「心のスペース」が生まれるからです。 モノの片付けは、あなたの人生そのものを、再編集するための、最も身近で、パワフルなセラピーなのかもしれません。
頭ではわかっていても、モノに込められた思い出や感情が強すぎて、どうしても手放せない。そんなこともあるでしょう。一人で過去の執着と向き合うのは、辛い作業かもしれません。
もし、あなたがその不自由さから抜け出し、心も暮らしも軽やかにしたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。 カウンセリングでは、あなたが捨てられないモノに、どんな心理的な意味を与えているのか、そのライフスタイルを安全な空間で一緒に探求します。そして、過去と和解し、「今、ここ」を生きるための勇気ある「決断」を、伴走者としてサポートさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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