“正論”というナイフを、振り回していませんか?

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

「だって、それが正しいことだから」

遅刻してきた友人に対して、「時間を守るのは、社会人として当たり前だよね」と、諭すように言う。 落ち込んでいる同僚に、「くよくよしていても、何も解決しないよ。もっと前向きになるべきだ」と、力強く励ます。 宿題をしない子どもに、「今やらないと、後で困るのはあなた自身なのよ」と、未来を案じて説得する。

言っていることは、一つも間違っていない。論理的にも、社会的にも「正しい」。 だからこそ、言っている本人は、自分は「良いこと」をしていると信じて疑いません。

しかし、なぜでしょう。 あなたの「正論」を受け取った相手は、感謝するどころか、顔を曇らせ、黙り込み、あるいは「あなたに何がわかるんだ」と、反発してくる。 正しいことをしているはずなのに、相手との心の距離は、ますます開いていくだけ…。 この、やるせないすれ違いに、あなたも思い当たる節はありませんか。

なぜ、「正論」は人の心を凍らせるのか?

正しいはずの言葉が、なぜ相手に届かないのか。それどころか、相手を傷つけてしまうのか。 アドラー心理学の視点から見ると、その理由は3つあります。

1.「正論」は、相手を“裁く”言葉だから 「正論」を口にする時、私たちは無意識のうちに、自分を「正しい側(=裁判官)」に、相手を「間違っている側(=被告人)」に置いてしまっています。この「上から目線」の構図(縦の関係)を、相手は敏感に感じ取ります。内容がどれほど正しくても、その「裁かれている」という不快感が、相手の心を固く閉ざさせてしまうのです。

2.「正論」は、相手の“感情”を無視するから 正論は、しばしば相手の感情を置き去りにします。落ち込んでいる人は、解決策よりも、まずは「辛かったね」という共感を求めているのかもしれません。あなたの正論は、その人の「悲しい」「悔しい」といった感情に、全く寄り添えていないのです。

3.「正論」は、相手の“逃げ場”を奪うから 人は、自分が間違っていると頭ではわかっていても、それを真正面からナイフのように突きつけられると、自尊心を守るために反発したくなる生き物です。正論は、相手を追い詰め、言い訳の余地さえも奪ってしまう。逃げ場を失った相手に残されるのは、さらなる反発か、あるいは心を閉ざすことだけです。

「正しさ」のナイフを、「共感」の毛布に持ち替える

では、どうすればいいのでしょうか。 その答えは、相手を打ち負かすための「正しさ」という名の冷たいナイフを置き、相手の心に寄り添うための「共感」という名の温かい毛布に、持ち替えることです。

相手を変えよう、コントロールしようとするのではなく、まずは「相手の世界を、相手の目で見て、相手の耳で聴き、相手の心で感じること」。 これが、アドラー心理学の言う「共感」であり、対等な「横の関係」を築くための、不可欠な第一歩なのです。

正論よりも、心に響く言葉たち

具体的な場面で、「正論」を「共感」の言葉に翻訳してみましょう。

  • ケース1:落ち込んでいる友人に
    • 正論:「くよくよしても仕方ない。元気を出して!」
    • 共感:「そうか、そんなことがあったんだね。それは辛かったね…」(評価もアドバイスもせず、ただ、相手の気持ちを受け止める)

  • ケース2:宿題をしない子どもに
    • 正論:「今やらないと、後で困るのはあなただよ!」
    • 共感:「宿題、なかなか進まないみたいだね。どこか難しいところでもあるの?よかったら、一緒に見てみようか?」(一方的に教えるのではなく、一緒に考える仲間になる)

人は、正しさによって動かされるのではありません。 「この人は、自分のことをわかってくれる」という安心感(所属感)と、「自分には、この課題を乗り越える力がある」という感覚(勇気づけ)によって、自ら変わり始めるのです。

あなたのその「正しさ」は、本当に、あなたと、あなたの目の前にいる大切な人を、幸せにしているでしょうか。 一度、その冷たいナイフを、そっと鞘に収めてみませんか。


長年、正しいことを言うのが誠実さだ、と信じてきた人にとって、そのスタイルを変えるのは難しいことかもしれません。つい感情的になると、正論で相手を論破したくなってしまうこともあるでしょう。

もしあなたが、その不毛な争いのパターンから抜け出し、大切な人との間に温かい関係を築きたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。 カウンセリングでは、あなたがなぜ「正しさ」にこだわってしまうのか、そのライフスタイルを探求します。そして、正しさではなく、共感と協力に基づいた人間関係を築くための具体的なコミュニケーションを、一緒に練習していきましょう。


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