日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
「いえいえ、そんなことないです!」が口癖のあなたへ
仕事で成果を出し、上司から「素晴らしい仕事だったね!」と褒められた時、すかさず「いえいえ、自分なんて全然です!周りの皆さんのおかげです!」と、全力で否定してしまう。 服装を「そのシャツ、素敵ですね」と言われて、「いえいえ、これ、セールで安かったんですよ」と、なぜか価値を下げてしまう。
「ありがとう」と素直に受け取るのが、なんだか居心地が悪くて、照れ笑いでごまかしてしまう。 褒められると、何か裏があるのではないか、お世辞ではないかと、つい勘ぐってしまう。
日本では「謙遜」は美徳とされています。しかし、行き過ぎた謙遜は、自分自身を不必要に卑下し、相手が差し出してくれた温かい言葉(好意)を、冷たく拒絶していることにもなるのです。そして、褒め言葉を否定するたびに、心の中で「また素直になれなかった…」と、小さな自己嫌悪を繰り返してはいないでしょうか。
なぜ、素直に「ありがとう」が言えないのか?
なぜ私たちは、褒め言葉を素直に受け取ることが、こんなにも難しいのでしょうか。 その背景には、いくつかの心理的な理由が考えられます。
一つは、「自分には、褒められるほどの価値はない」という、根深い自己評価の低さ(劣等感)です。 他者からのポジティブな評価と、自分自身のネガティブな自己評価との間に大きなギャップがあるため、褒め言葉を「事実とは違う、間違いだ」と認識し、無意識のうちに訂正しようとしてしまうのです。
また、心のどこかで相手への不信感があり、対人関係を「上か下か」で見る「縦の関係」で捉えているのかもしれません。その場合、褒め言葉は、相手が自分をコントロールするための「お世辞」や「おだて」に聞こえてしまい、素直に受け取ることができないのです。
褒め言葉は、相手からの「勇気づけ」のプレゼント
ここで、褒め言葉に対する見方を、少し変えてみませんか。 相手があなたにかける「すごいね」「素敵だね」という言葉は、あなたを評価・採点するためのものではありません。 それは、あなたの存在や行動に対する、相手からの純粋な「喜び」や「感謝」の表現であり、あなたを応援したいという「勇気づけ」の、温かいプレゼントなのです。
「課題の分離」で考えてみましょう。 相手があなたをどう評価し、どんな言葉をかけるかは「相手の課題」です。 その言葉(プレゼント)を、あなたがどう受け取るかは「あなたの課題」です。
せっかく相手が差し出してくれたプレゼントを、「いえ、結構です」と突き返すのは、相手の好意を踏みにじる、少し寂しい行為だとは思いませんか。
プレゼントを、笑顔で受け取るための心のレッスン
では、どうすれば、褒め言葉というプレゼントを、上手に受け取れるようになるのでしょうか。今日からできる、簡単な心のレッスンをご紹介します。
ステップ1:全力での“否定”をやめてみる まずは、「そんなことないです!」「とんでもないです!」といった、全力での否定の言葉を、意識してぐっと飲み込む練習から始めましょう。気まずくても、少しだけ沈黙してみる。それだけでも、大きな一歩です。
ステップ2:魔法の言葉「ありがとう」を、ただ言ってみる 次に、褒められたら、他の言葉は何も付け足さずに、ただ一言、「ありがとうございます」とだけ言ってみましょう。その後に、「でも…」とか「まだまだです」といった、言い訳の言葉を続ける必要はありません。シンプルに、感謝だけを伝えるのです。
ステップ3:「事実」と「感情」を、心の中で分けてみる もし、「すごいですね」という言葉に、どうしても「いや、自分はすごくない」と抵抗を感じてしまうなら、「この人は、私のことを“すごい”と感じてくれたんだな」という客観的な事実と、「それに対して、自分はまだそうは思えない」という自分の感情を、心の中で分けてみましょう。相手がそう感じたことを、あなたが否定する必要はないのです。
ステップ4:「I(アイ)メッセージ」で、喜びを付け加える(上級編) 慣れてきたら、「ありがとうございます。そう言っていただけて、私はとても嬉しいです」というように、感謝の言葉に、自分の喜びの気持ち(Iメッセージ)を添えてみましょう。これは、相手の「勇気づけ」というプレゼントに対する、最高の「お返し」になります。
褒められ上手になることは、決して傲慢になることではありません。 それは、自分自身をありのままに受け入れ(自己受容)、他者からの温かい気持ち(勇気づけ)を、感謝と共にきちんと受け取ることができる、成熟した心の在り方なのです。
長年の謙遜の癖は、意識しても、なかなかなおらないものです。褒められると、罪悪感のようなものを感じてしまう、という方もいるかもしれません。 もし、あなたがその“褒められ下手”を卒業し、もっと楽に、そして豊かに対人関係を築いていきたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、あなたがなぜ褒め言葉を素直に受け取れないのか、その背景にある劣等感やライフスタイルを安全な空間で一緒に探求します。そして、自分に優しくOKを出し、他者からの勇気づけを自分の力に変えていくための具体的な練習を、伴走者としてサポートさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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