日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
あなたの心を縛る、見えない“ルールブック”
「母親なのだから、常に笑顔で子どもに接するべきだ」 「社会人なら、これくらいの仕事はできて当然であるべきだ」 「夫(妻)は、言わなくても私の気持ちを察して、こうしてくれるべきだ」 「子どもは、親の言うことを素直に聞くべきだ」
私たちの頭の中には、こうした無数の「~べき」「~であるべき」という言葉が、まるで分厚い“ルールブック”のように存在しています。 そして、自分や他人が、そのルールブックから少しでもはみ出すと、自分に対しては「自己嫌悪」や「罪悪感」を感じ、他人に対しては「怒り」や「失望」を感じてしまう。 この、あなただけのルールブックこそが、日々の多くの心の苦しみの、本当の原因なのかもしれません。
「~べき」の正体は、あなたの“個人的な法律”
では、この「~べき」という思考は、どこからやってくるのでしょうか。 それは、誰もが従うべき客観的な真実や、普遍的な法則ではありません。アドラー心理学の視点から見れば、それはあなたがこれまでの人生経験の中で作り上げてきた、あなただけの“個人的な法律”、つまりあなたの「ライフスタイル」の一部なのです。
例えば、子どもの頃に「ちゃんとしなければ、親に叱られる」という経験を繰り返した人は、「人は常に、ちゃんとしているべきだ」という法律を、自分を守るために無意識のうちに作り上げたのかもしれません。 その法律は、かつてのあなたにとっては、必要なものだったでしょう。しかし、大人になった今、その古い法律が、もはや現実の状況にそぐわない、あなた自身を不自由にする“呪いの言葉”になってはいないでしょうか。
「べき」がもたらす、3つの不自由
この硬直した「べき思考」は、私たちの人生に、具体的にどのような不利益をもたらすのでしょうか。
1.自分を、完璧主義で追い詰める 「こうあるべき」という高すぎる理想と、現実の自分とのギャップに、常に苦しむことになります。少しでも「べき」から外れると、「自分はなんてダメなんだ」と、際限なく自分を責めてしまいます。
2.他人を、不寛容に裁いてしまう 自分の「べき」という物差しを、他人にも当てはめてしまいます。「〇〇してくれて当然だ」と期待し、相手がその通りに行動しないと、激しく失望し、腹を立てる。これは「課題の分離」ができていない、典型的な状態です。
3.人間関係を、権力争いで破壊する 「あなたは、こうすべきだ」という主張は、相手に対する「あなたは間違っている」というメッセージであり、無意識の「支配」です。そして、それは必ず相手の反発を招き、不毛な「権力争い」を引き起こします。そこに、協力的な関係が生まれる余地はありません。
“呪いの言葉”を、“魔法の言葉”に変える方法
では、どうすればこの「べき」という呪いを解き、心を軽くすることができるのでしょうか。
ステップ1:自分の「べき」に、まず気づく まずは、自分がどんな時に「~べきだ」と考えているか、意識的に観察し、気づくことから始めましょう。「ああ、また『べき』って思ったな」と、自分を客観視するだけで、呪いの力は少し弱まります。
ステップ2:「~べき」を、別の言葉に翻訳してみる 次に、その呪いの言葉を、より柔軟で、可能性に満ちた“魔法の言葉”に、意識的に翻訳する練習をしてみましょう。
- 翻訳例1 (べき)「母親は、常に笑顔でいるべきだ」 (翻訳後)「母親だって、疲れる時もあるよね。でも、できれば笑顔でいたいな」
- 翻訳例2 (べき)「夫は、私の気持ちを察するべきだ」 (翻訳後)「夫に、私の気持ちが伝わると嬉しいな。どうすれば伝わるか、試してみようか」
- 翻訳例3 (べき)「部下は、指示に黙って従うべきだ」 (翻訳後)「部下が、気持ちよく動いてくれると助かるな。そのためには、どんな伝え方ができるだろう?」
この翻訳のポイントは、「~べき」という断定・強制の言葉を、「~したいな(願望)」「~できるといいね(希望)」「~と私は思う(個人の意見)」といった、柔らかく、選択の余地のある言葉に置き換えることです。
この言葉の転換が、あなたを「かくあるべし」という硬直した世界から解放し、「どうすれば、もっと良くなるだろう?」という、創造的で、勇気に満ちた、新しい世界へと導いてくれるのです。
長年、当たり前だと思ってきた「べき」という考え方を、一人で手放すのは難しいことかもしれません。自分の“個人的な法律”が何なのか、自分ではなかなか気づけないことも多いでしょう。 もしあなたが、その見えないルールブックから解放され、より柔軟で、あなたらしい生き方を選択したいと願うなら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、あなたを縛っている「べき」という名の呪いの正体を客観的に見つめ直し、それがあなたの人生をどう不自由にしているかを探求します。そして、その呪いを解き、あなた自身と、あなたの周りの人々を幸せにするための、新しい言葉と生き方を、一緒に見つけていきましょう。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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