日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
友情という名の、見えない鎖
会うたびに、愚痴や誰かの悪口ばかり聞かされ、別れた後には、どっと疲労感が押し寄せる。 昔はあんなに楽しかったのに、今では価値観が全く合わなくなり、一緒にいても心からの笑顔になれない。 相手に利用されているような、都合よく扱われているような気がするのに、「友達がいない人」だと思われるのが怖くて、その関係を続けてしまっている。
かつてはかけがえのない存在だったはずの「友達」が、いつの間にか、会うのが苦痛な相手になってしまう。 そして、「一度結んだ関係は、永遠に続けるべきだ」「友達を見捨てるなんて、冷たい人間だ」という、見えないプレッシャーや罪悪感が、まるで“鎖”のように、あなたをその苦しい関係に縛り付けてはいないでしょうか。
「関係を終える」という、あなた自身の課題
アドラー心理学では、人間関係を始めるのも、続けるのも、そして「終える」のも、すべて対人関係における、個人の大切なタスクだと考えます。 そう、関係を終えることは、失敗でも、裏切りでもなく、あなたの人生における、一つの「決断」なのです。
ここで、「課題の分離」をしてみましょう。
- あなたの課題:その人と、これからも友人として付き合い続けるかどうかを、あなた自身の気持ちと価値観に基づいて「決断」すること。そして、その決断の結果を引き受けること。
- 相手の課題:あなたが距離を置いたことに対して、どう思うか。悲しむのか、怒るのか、あるいは何も感じないのか。それはすべて、あなたがコントロールできない相手の課題です。
「相手を傷つけたくないから」という理由で、あなたが我慢し、心をすり減らし続けるのは、一見、優しさに見えるかもしれません。しかし、それは「自分の人生をどう生きるか」という、あなた自身の最も大切な課題から逃げているだけなのです。そして、本音を隠して付き合い続けることは、相手に対しても、決して誠実な態度とは言えないでしょう。
「友達」の定義を、アップデートしませんか?
なぜ私たちは、苦しいとわかっている関係を、なかなか手放せないのでしょうか。 それは、私たちの頭の中に、「友達なら、こうあるべきだ」という、硬直した理想像があるからかもしれません。
しかし、本当の友人関係とは、お互いが自立した個人として、対等な立場で、共にいて心地よく、互いを尊敬し、勇気づけ合える関係のこと。どちらか一方が我慢したり、利用されたり、心を消耗したりする関係は、もはや健全な「交友」とは呼べないのです。
人のライフステージが変われば、価値観も変わり、付き合う人も変わっていく。それは、誰にでも起こる、ごく自然で、健康的なことなのです。
罪悪感なく、静かに関係を手放す方法
では、どうすれば、罪悪感なく、その鎖をほどくことができるのでしょうか。 ドラマチックな絶交宣言や、相手を非難するような態度は必要ありません。
1.物理的に、少しずつ距離を置く 自分から連絡するのをやめてみましょう。誘われても、「ごめん、その日は別の予定があって」と、無理のない範囲で断る回数を増やしてみる。LINEの返信も、即レスをやめ、少し時間を置いてみる。そうして、徐々に、自然に距離ができていくのを待ちます。
2.自分を責めない、相手も責めない 「自分が冷たい人間だからだ」と自分を責めたり、「あの人が変わってしまったからだ」と相手を非難したりしないことです。ただ、「今の自分たちには、もうこの関係は必要なくなったのだ」と、良い悪いの価値判断をせずに、事実として静かに受け入れるのです。
3.新しい関係性や、自分自身にエネルギーを注ぐ 苦しい関係に注いでいた時間とエネルギーを、今あなたを大切にしてくれる人や、これから出会う新しい人との関係を育むために使ってみましょう。あるいは、自分の好きなことや、学びたいことに集中するのもいいでしょう。
すべての人と、同じように仲良くする必要などありません。 あなたにとって本当に大切な、限られた人との関係を、深く、丁寧に育んでいくこと。それこそが、豊かな人生を送るための鍵なのです。
長年の友人との関係を手放すことには、大きな罪悪感や、孤独になることへの恐怖が伴うものです。「相手から責められたらどうしよう」と考えると、一歩が踏み出せないかもしれません。 もし、あなたがその決断に悩み、誰かのサポートが必要だと感じたら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、あなたがその関係をなぜ手放せないのか、その背景にあるあなたのライフスタイルを探求し、あなたの本当の気持ちを整理する安全な場所です。そして、罪悪感なく、あなた自身を大切にするための「決断」をする勇気を、伴走者としてサポートさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
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