日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
「何者かにならなければ」という、見えない焦り
SNSで成功者のきらびやかな投稿を見るたびに、「それに比べて自分は、なんて平凡なんだろう…」と落ち込んでしまう。 「何か特別な才能がなければ、自分には価値がない」と、心のどこかで思い込んでいる。 同窓会などで友人の華々しい活躍を聞くと、何も成し遂げていない自分に、強烈な焦りを感じる。 そして、「その他大勢」の一人でいることに、耐えられないような苦しさを感じる…。
この苦しみの根底には、「特別な存在でなければ、幸せになる資格はないし、人から認められることもない」という、現代社会に蔓延する、強迫観念にも似た思い込みがあります。 私たちは、常に「もっと上へ、もっと目立つ場所へ」と自分を駆り立て続け、終わりのないマラソンに、息を切らしているのかもしれません。
その苦しみは「優越コンプレックス」かもしれない
アドラー心理学では、このように「特別な自分」であろうとすることの裏側には、**「優越コンプレックス」**という心理が隠れていると考えます。
これは、一見すると自信に満ち溢れているように見えますが、その実態は、「ありのままの平凡な自分では、価値がない」という、強烈な劣等感を隠すための、不健全な心の働きなのです。 「自分は優れている」と思わなければ、あるいは「特別な存在」として振る舞わなければ、崩れ落ちてしまいそうな脆い自尊心を、必死で守ろうとしている状態とも言えます。
考えてみてください。本当に自分に自信がある人は、わざわざ「自分は特別だ」とアピールする必要はありません。なぜなら、ありのままの自分に、すでにOKを出せているからです。
「普通であることの勇気」とは何か
この、息苦しい「何者かにならなければ」という呪縛から解放されるための鍵。 それが、アドラー心理学が提唱する「普通であることの勇気」です。
これは決して、「向上心を捨てて、怠惰になりなさい」ということではありません。 「普通であることの勇気」とは、「特別に優れていなくても、自分の価値は、何一つ変わらない」という、当たり前の事実を、ありのままに受け入れる勇気のことです。
他人との比較の競争から、自ら降りる。 「その他大勢であること」「平凡であること」を、ネガティブなものとしてではなく、ただの事実として、静かに、そして積極的に受け入れる覚悟を持つ。
目立つ必要も、誰かより優れている必要もない。 ただ、ありのままの自分で、ここにいていい。 そう、あなた自身に許可を出してあげることなのです。
平凡な毎日の中に、「貢献感」という宝物を見つける
では、「普通」であることを受け入れた上で、私たちは、日々をどう生きていけばいいのでしょうか。 アドラー心理学が示す答えは、特別な成功物語を追い求めることではなく、平凡な毎日の中にある「貢献感」という宝物を見つけ出すことです。
「特別な自分」になることで注目を集めようとするのではなく、「平凡な自分」として、目の前の人に何ができるかを考える。
- 家族のために、温かい食事を用意する。
- 職場で、困っている同僚に「何か手伝おうか?」と声をかける。
- 地域で、落ちているゴミを一つ拾う。
- 友人の話を、評価もアドバイスもせず、ただ真剣に聴く。
これらは、SNSでたくさんの「いいね」が付くような、華々しい行為ではないかもしれません。 しかし、この一つひとつの「誰かの役に立てた」という具体的な実感こそが、私たちの心を本当に満たし、「自分には価値がある」という、誰にも奪われることのない、揺るぎない自信を育んでくれるのです。
人生の価値は、どれだけ「特別」であったかではなく、どれだけ「貢献」できたかで決まります。 特別なヒーローにならなくても、私たちは誰もが、誰かにとっての「かけがえのない存在」であり、そのままで、十分に価値があるのです。
長年、「特別でなければならない」という思いに囚われてきた人にとって、「普通でいい」と受け入れることは、逆に不安や恐怖を感じるかもしれません。「貢献」と言われても、自分にできることなんて何もない、と感じてしまうこともあるでしょう。
もしあなたが、その苦しい競争から降り、穏やかな心で自分の人生を歩んでいきたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。 カウンセリングでは、あなたがなぜ「特別な自分」であろうとするのか、そのライフスタイルの背景にある劣等感を安全な空間で探求します。そして、「普通であることの勇気」を持ち、日々の生活の中に「貢献感」という確かな喜びを見つけていくお手伝いをさせていただきます。
初回カウンセリング(オンライン)はこちらからお申し込みいただけます。

お会いできるのを楽しみにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 LINE公式アカウントでは、今後も皆さんの日々の悩みに役立つヒントを配信していきます。ぜひ、友だち追加をしてくださいね。
コメント