日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
期待、そして、お決まりのがっかり…
友人に勇気を出して悩みを打ち明けたのに、期待していた「大変だったね」という共感の言葉ではなく、求めてもいないアドバイスが返ってきて、がっかり…。 パートナーが記念日を覚えていてくれて、何かサプライズをしてくれるはず、と密かに期待していたのに、何事もなく一日が終わり、勝手に不機嫌になってしまう。 私がこんなに頑張っているのだから、誰かが「すごいね」と褒めてくれるはずだ、と待っていたのに、誰からも声がかからず、虚しくなる。
こうした「期待して、がっかりする」という心の動きは、私たちの日常に頻繁に起こります。 そして、このがっかり感は、やがて相手への「なんでわかってくれないの?」という悲しみや、時には「どうしてやってくれないんだ!」という怒りへと変わっていき、人間関係に静かな亀裂を入れていくのです。
その期待、実は「支配欲」かもしれません
なぜ、私たちはこれほどまでに他者に期待してしまうのでしょうか。 その根底には、「私の気持ちをわかってほしい」「私の頑張りを認めてほしい」という、自然な「承認欲求」があります。
しかし、アドラー心理学は、その心理をさらに深く、そして少し厳しく見つめます。 過剰な期待とは、突き詰めれば「他者を自分の思い通りにコントロールしたい」という、一種の支配欲の表れなのです。
「私がこう思っているのだから、あなたも同じように感じるべきだ」 「私がこう望んでいるのだから、あなたはそれを察して行動すべきだ」
これは、相手に対して、あなたの脚本通りに動く「登場人物」であることを、無意識のうちに要求している状態です。 しかし、ここで私たちは、ある厳しいけれど、動かすことのできない真実と向き合わなければなりません。それは、「あなたの期待を満たすために生きている人は、この世に一人もいない」ということです。あなたの親も、パートナーも、友人も、同僚も。誰もが、あなたとは違う、その人自身の人生を生きているのです。
「信じる」ことと「期待する」ことは違う
「じゃあ、もう誰も信じちゃいけないの?」 そんな声が聞こえてきそうです。いいえ、決してそうではありません。 アドラー心理学では、「信頼」と「期待」は全く別物だと考えます。
- 期待とは、相手に「こうしてくれるはずだ」という条件や見返りを求めることです。それは、相手の行動を自分の物差しで測り、評価する行為です。
- 信頼とは、相手に何の条件もつけず、ただ「その人」そのものを信じることです。相手が自分の思う通りに行動するかどうかは関係なく、その人の存在を無条件に受け入れること。これは、相手の課題に土足で踏み込まない「課題の分離」ができて、はじめて可能になる姿勢です。
期待は、相手を縛り、自分を苦しめます。 信頼は、相手を解き放ち、自分をも自由にするのです。
がっかりスパイラルから抜け出すための処方箋
この、勝手に期待し、勝手にがっかりする苦しいスパイラルから抜け出すために、今日からできることがあります。
一つは、「課題の分離」を徹底することです。 あなたがどう感じるかは「あなたの課題」それに対して、相手がどう感じ、どう行動するかは「相手の課題」。相手の課題に、あなたは介入できません。「〇〇してくれて当然」という考えを、まずは手放してみましょう。
そしてもう一つは、「お願い」と「感謝」をセットで使うことです。 「言わなくても察してほしい」と期待するのをやめ、もし相手にやってほしいことがあるのなら、それを「お願い」として、具体的な言葉で伝えてみるのです。「申し訳ないけれど、この仕事を手伝ってもらえると、とても助かります」というように。
そして、相手がそのお願いに応えてくれたなら、それがどんなに小さなことであっても、心からの「ありがとう」を伝えること。 この「お願い」と「感謝」の丁寧なコミュニケーションこそが、相手を支配しようとする「縦の関係」ではなく、お互いを一人の人間として尊敬しあう「横の関係」を築いていくのです。
期待を手放すことは、人間関係を諦めることではありません。 それは、他者を自分の都合のいい道具と見なす不自由な生き方をやめ、自立した個人として、心地よく、温かく関わり合うための、最も大切な第一歩なのです。
長年の「期待する」という心の癖は、頭でわかっても、すぐには変えられないかもしれません。期待が裏切られたと感じた時のがっかり感や怒りを、どう処理すればいいかわからなくなることもあるでしょう。 もし、あなたがその苦しいパターンから抜け出し、楽な人間関係を築きたいと願うなら、一度お話しに来ませんか。
カウンセリングでは、あなたがなぜ他者に過剰に期待してしまうのか、そのライフスタイルの「目的」を一緒に見つめ直します。そして、「課題の分離」を実践し、支配ではない協力の関係を築いていくための具体的な練習を、安全な空間でサポートさせていただきます。
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お会いできるのを楽しみにしています。
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