症状が叶えてくれる「目的」

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

また、あの嫌な感じが…

大事な会議の前、人であふれる電車の中、あるいは静かな美容室でシャンプーをされている時。 突然、心臓が早鐘を打ち、息が苦しくなる。 「このまま倒れてしまうのではないか」「何か大変なことが起きるのではないか」という恐怖に襲われる。

一度経験すると、「またあの発作が起きたらどうしよう」という不安、いわゆる「予期不安」に苛まれ、特定の場所や状況を避けるようになってしまう。

多くの方は、その原因をストレスや過去の出来事に求め、「あの時のストレスが今になって体に現れているんだ」と考えます。もちろん、それも一因ではあるでしょう。 しかし、アドラー心理学は、少し変わった、しかし非常に希望に満ちた視点を提供します。

その症状、何のために「使って」いますか?

アドラー心理学には「原因論」ではなく「目的論」で物事を捉えるという、とてもユニークな考え方があります。

過去の「原因」が現在のあなたを決定しているのではなく、未来の「目的」を達成するために、今の感情や行動、そして時には身体症状さえも、あなた自身が選び、使っていると考えるのです。

これをパニック発作に当てはめてみると、どうなるでしょうか。 「ストレスが原因で動悸が起きる」のではなく、「何らかの目的を達成するために、動悸という症状を自ら作り出し、使っている」と捉え直すのです。

「そんな馬鹿な。あんなに苦しいのに、自分で作っているはずがない」 そう思われるのも、もっともです。これは決して、あなたの苦しみを軽んじたり、仮病だと責めたりするものではありません。むしろ、その逆です。

もし、その症状を無意識にせよ自分で作り出しているのだとしたら、自分の力でそれをやめることもできる、という希望の光が見えてくるからです。

症状が叶えてくれる「目的」とは

では、その「目的」とは一体何なのでしょうか。 それは人それぞれですが、いくつか典型的なパターンがあります。

一つは、「人生の課題からの回避」です。 例えば、大勢の前でのプレゼンや、責任ある役職を引き受けること、あるいは誰かと深く関わること。そういった、あなたが「失敗したくない」「傷つきたくない」と感じるような人生の課題に直面した時、発作が起きるとどうなるでしょう。

プレゼンを誰かに代わってもらえたり、役職を辞退する正当な理由になったり、人と会う約束をキャンセルできたりします。 つまり、症状が「その課題に取り組まなくてもよい」という免罪符として機能するのです。

もう一つは、「他者からの特別な注目や援助を得る」という目的です。 発作で苦しんでいる時、周りの人は心配し、優しくしてくれるでしょう。 「大丈夫?」と声をかけ、そばにいてくれるかもしれません。 普段はなかなか言えない「助けてほしい」「一人にしないでほしい」というメッセージを、症状が雄弁に語ってくれるのです。

これは、あなたが弱いからでも、ずるいからでもありません。 ただ、人生の課題に立ち向かう勇気をくじかれてしまい、別の方法で自分の尊厳を守り、他者とのつながりを確保しようとしている、無意識の戦略なのです。

自分で選べる、という勇気

「あなたのその症状は、何かを回避するため、あるいは注目を得るために、ご自身で使っているのですよ」 カウンセリングでそうお伝えすると、最初は抵抗される方がほとんどです。

しかし、対話を重ねるうちに、ご自身の心の奥にある「目的」に気づき、ハッとされる瞬間が訪れます。 そして、その気づきこそが、回復への大きな一歩となります。

なぜなら、自分の「目的」がわかれば、症状に頼らない別の方法を選び直すことができるからです。

プレゼンが不安なら、発作を起こす代わりに「とても不安です」と正直に打ち明けてみる。誰かに助けを求めてみる。 誰かにそばにいてほしいなら、症状で気を引くのではなく「一緒にいてほしい」と素直に伝えてみる。

それは、とても勇気がいることかもしれません。 しかし、その勇気を持つことで、あなたは症状という不自由な支配者から解放され、人生の主導権を自分の手に取り戻すことができるのです。

あなたのその苦しみは、決してなくならないものではありません。 それは、あなたが人生と向き合うための、新しい方法を見つけるべきだという、あなた自身からのサインなのかもしれません。


一人でご自身の「目的」に気づくのは、とても難しい作業かもしれません。 何に恐れ、何を避けようとしているのか。堂々巡りになってしまうこともあるでしょう。 もしあなたが、その苦しみから一歩抜け出したいと感じていらっしゃるなら、一度お話しに来ませんか。

カウンセリングでは、あなたを責めることなく、あなたの心に寄り添いながら、その「目的」を一緒に探すお手伝いをします。そして、症状に頼らなくても生きていける「勇気」を、あなた自身の中に見出すためのサポートをします。


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