あなたの疲れは、「課題の混同」からかもしれない

日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。

共感しすぎて疲れてしまうエンパス・HSPへ。心を守るためのエネルギー管理術

友人の悩みを聞いていると、まるで自分のことのように心が痛む。 誰かが不機嫌なだけで、その場の空気が重くのしかかってきて、ぐったり疲れてしまう。

そんな風に、他人の感情に深く共感しすぎて、エネルギーを消耗していませんか?

その繊細な共感力は、本来、人の痛みに寄り添える、とても尊い才能です。 しかし、その才能の使い方を間違えると、他人の感情の嵐に、あなた自身が飲み込まれてしまいます。

アドラー心理学は、その才能を大切にしながら、心を守るための「エネルギー管理術」を教えてくれます。

あなたの疲れは、「課題の混同」からかもしれない

なぜ、共感しすぎると疲れてしまうのでしょうか。 それは、あなたが無意識のうちに、相手の感情を「自分のもの」として背負い込んでしまっているからです。

アドラー心理学では、これを「課題の分離」ができていない状態、と考えます。

  • 相手が悲しんだり、怒ったり、落ち込んだりすること。それは、あくまで「相手の課題」です。
  • あなたが、その相手を前にして、どう振る舞い、どう貢献するか。それが「あなたの課題」です。

共感しすぎて疲れてしまう人は、この境界線が曖昧になり、相手の心の荷物まで、自分のリュックサックに詰め込んでしまっているのです。二人分の荷物を背負えば、疲れてしまうのは当然ですよね。

心のバリアを張る、3つのステップ

では、どうすれば、相手の課題を背負い込まずに、心を守ることができるのでしょうか。 それは「心を閉ざす」ことではありません。「心の境界線」を、意識的に引く練習です。

1. 心の中で「これは、相手の課題」と宣言する

相手の強い感情に触れた時、まず心の中でそっと呟いてみてください。 「この悲しみ(怒り、不安)は、私の感情ではない。これは、この人の課題だ」と。 それだけで、感情の渦との間に、一枚、薄い心のバリアを張ることができます。

2. 「感じる」から「貢献する」へ、意識を切り替える

次に、自分の意識を「相手の感情を感じること」から、「自分にできる貢献は何か?」へと切り替えます。

相手の悲しみを、一緒に悲しむことだけが、寄り添うことではありません。 ただ黙って隣に座り、話を聞くこと。 温かいコーヒーを一杯、淹れてあげること。 「大変だったね」と、一言だけ声をかけること。

これらはすべて、相手の課題に踏み込まずにできる、素晴らしい「貢献」であり、「勇気づけ」です。あなたができる貢献に集中することで、相手の感情の渦に巻き込まれるのを防ぐことができます。

3. 物理的に「リセット」する

共感的な会話が終わった後、意識的に「リセット」の時間を作りましょう。 手を洗う、窓を開けて深呼吸する、少しだけ散歩するなど、物理的な行動を挟むことで、「相手の時間」から「自分の時間」へと、心を切り替えることができます。


あなたの優しさと共感力は、誰かを救う力になります。 しかし、あなたが倒れてしまっては、元も子もありません。

本当の共感とは、相手と一緒に溺れることではなく、自分は岸辺にしっかりと立ち、相手に浮き輪を投げてあげること。 そのためには、まず、あなた自身が心穏やかでいることが何よりも大切です。

もし、心の境界線を引くのが難しい、どうしても相手の感情を背負ってしまう、と感じるなら。 カウンセリングは、あなたが安心してその練習をするための場所です。 あなたの素晴らしい才能を、あなたと周りの人の「幸せ」のために使えるよう、一緒に考えていきましょう。

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