日本アドラー心理学振興会 認定心理療法士、認定心理カウンセラーの田中詠二こと、えいさんです! 子育て、仕事、人間関係の悩みに、心理学の観点から解決のヒントをお届けします。
「やる気ないなら、もういいよ」と言いそうになった時
僕は普段、カウンセラーとしての活動のほかに、製造業やサービス業の会社を経営しています。そして、趣味で始めたコーヒーの焙煎と販売もしています。色々な立場で、たくさんの人と関わる毎日です。
先日、あるプロジェクトの会議で、こんな場面がありました。 一人の若手社員に意見を求めても、彼はただ「…特にありません」と黙り込むばかり。何度か水を向けても、反応は同じ。
正直、僕の心の中では「やる気がないのか?」「会議に参加してる意味がないじゃないか」なんて、トゲのある言葉が渦巻いていました。これは、相手の行動を見て「原因」を探し、ジャッジしようとする関わり方です。
でも、そこでふと、カウンセラーとしての自分に戻るのです。
その「沈黙」の目的はなんだろう?
アドラー心理学では、全ての行動には(無意識的なものも含めて)「目的」があると考えます(目的論)。
彼が黙り込む「目的」は何だろう?
- 「下手に意見を言って、否定されたくない」という自己防衛?
- 「責任を負いたくない」という課題からの逃避?
- あるいは、そもそも「自分なんかの意見に価値はない」と、自信を失っている「勇気がくじかれている」状態なのかもしれない。
そう考えると、「やる気がない」と切り捨てるのは、あまりに早計で、一方的な見方だと気づきます。
「縦」ではなく「横」の関係を築く勇気
会議の後、僕は彼を誘って、自分で焙煎したコーヒーを淹れました。
「会議、緊張するよね。僕も昔はそうだったよ」 「もし何か考えがまとまったら、後からLINEとかで教えてくれるだけでも、すごく助かるよ」
評価や命令をする「縦の関係」ではなく、同じ仲間として対等な立場で関わる「横の関係」です。 すぐに意見を求めるのではなく、彼が安心して自分の力を発揮できる方法を一緒に探す。これも大切な「勇気づけ」の一つです。
大切なのは、彼を変えることではありません。僕たちの「関係性」をより良くすること。 彼が「ここにいていいんだ」「自分も役に立てるんだ」と感じられるような共同体感覚を育むことなのです。
あなたの周りにもいませんか? 「どうして分かってくれないんだろう」と感じる人。
もしかしたら、その人も何かに「勇気がくじかれて」いて、あなたとの間に「横の関係」を築く方法を探しているのかもしれません。
一人で抱え込まず、一緒にその「目的」と「勇気づけ」の方法を探してみませんか。 あなたらしい、あたたかい人間関係を築くお手伝いができれば嬉しいです。
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